「スポーツ栄養」に携わりたいという栄養士・管理栄養士さんは多いですが、
実際働くとなるとなかなか就職先としては厳しいのが現状。
「スポーツ栄養」を仕事にするためには、どのような栄養士・管理栄養士が
求められるのか。また、どのようなスキルが必要なのか。をフィジカルコーチの
澤野 博さんからメッセージをいただきました。
スポーツ栄養に携わりたい方へ
はじめまして。フィジカルコーチの澤野と申します。
今回はこれからスポーツ栄養に携わっていきたいとお考えの栄養士養成校に
通う学生さん、栄養士・管理栄養士さんに向けて、私が感じていることをお伝え
したいと思います。
【外から見た現状の問題点】
書店に行けばスポーツ栄養に関するたくさんの書籍があり、インターネットを
検索すればスポーツ栄養に携わっている方が情報を発信しています。
しかしそれらのほとんどがレシピの紹介となっており、なぜそのレシピなのかと
いう学問的な裏付けの部分ははっきり言って非常にお粗末です。
そのように見えてしまう原因の一つに、スポーツ栄養に携わっている方の
運動競技に対する知識の浅さがあるのではないかと思います。運動競技に
対する基本的な知識がなければ競技者を支えるチームとして、競技力の向上に
努めるということはできません。
私も数々のスポーツ栄養に関する書籍や情報を読みましたが、栄養に関する
ことはもちろん、運動競技もきちんと理解しているなと感じた方は残念ながら
数人しかおりません。
【食事だけで競技力は上がらない】
食事を変えるだけで、競技者の身体能力が向上し、勝てるようになると
お思いでしょうか。瞬発力がつく食事、筋力がつく食事、持久力がつく食事
などといろいろ言われていますが、もし本当にそうであれば我々フィジカル
コーチは必要ありませんね。確かに食事も競技力向上のひとつの要素では
ありますが、食事を変えただけで勝つことができれば苦労はありません。
そもそも勝敗を決定する競技力はどのような要素で構成されているのかを
きちんと理解し、食事だけが特別とは考えずに、ほかの要素と併せて
競技者を支えるという考え方が大切です。
【求められる能力】
1.生化学、生理学、解剖学などの人体に関する知識
実際の現場ではわれわれフィジカルコーチとの連携は非常に重要です。
これらの学問をを正しく理解することで、初めて連携をすることが可能に
なるのではないかと思います。これらの内容は学校の授業でも習ったかと
思いますが、残念ながら授業レベルでは競技者はもとより、健康志向の方、
疾患をお持ちの方を支えることも困難です。
2.スポーツを分析する能力
ある運動競技はどのような運動形態で、どのようなエネルギー代謝が考え
られて、どのような身体能力が必要とされているのか。
栄養士・管理栄養士さんが体力トレーニングのメニューを組み立てるわけでは
ありませんが、その運動競技を 理解し、競技者の体を理解するために自分
なりに分析をし、関係者とディスカッションできることが重要です。
また、体力トレーニングの基本的な考え方をふまえ、フィジカルコーチが行って
いるトレーニングを理解することも必要です。以前、長年スポーツ栄養に携わって
いる方が、「この運動競技は息を止めてダッシュを行うため、無酸素性運動で、
そのため乳酸がたくさん出て疲労しやすい。」という趣旨のことを書かれていました。
残念ながら現職のフィジカルコーチでこのような考え方をする人は今はほとんど
いません。
もしこの文章の意味がわからないようであれば、もう少し勉強が必要かも
しれません。
3.栄養学の知識
実はわれわれフィジカルコーチだけでなく、技術コーチや監督たちも栄養のことに
関しては一通りの知識はあります。それはトレーニングだけで競技力を向上させる
ことは難しいということを知っているからです。たとえわれわれがどんなにいい体力
トレーニングを行ったとしても、その後の栄養摂取がお粗末であれば何の効果も
出せません。それゆえに栄養に対する知識についても勉強しています。
そのような中で栄養士・管理栄養士という専門職としてどのような情報提供が
できますか。我々と同じレベルの話しかできなければ、残念ながら現場では必要
とされません。
4.仕事を取るための企画営業力
スポーツ栄養の仕事は天から降ってくるわけではありません。企画力、営業力も
必要になってきます。スポーツ栄養が必要と考えている現場はいくらでもあります。
そこにどのようなアプローチをしてゆくか。栄養士・管理栄養士ならではの感性を
もってルート開拓をし、仕事に結びつける熱意も必要です。しかし熱意だけでは
仕事に結びつきません。
その陰には綿密な企画が必要です。スポーツ栄養の仕事がないと考えるのでは
なく、どのようにしたら仕事になるかという発想の転換が非常に大切です。
本当にスポーツ栄養を仕事にしてゆきたいのであれば、資格を取ることを目標に
せず、運動競技をきちんと理解することが非常に大切です。
「スポーツ栄養士」という資格ができ、取得を目指している方も多いと思います。
しかしこれは協会資格の上に、管理栄養士と同様に名称独占資格のためこの
資格がなければ運動競技に関われないということではありません。
今後、運動競技をしっかり理解しているということは、スポーツ栄養士の中でも
レベルの違う指導ができることにつながると思います。
それをどこで学ぶのか。ハーパーやギャノンなどの生化学や生理学の専門書や
「トレーニングジャーナル」や「コーチングクリニック」といったスポーツ専門雑誌、
セミナー受講など学ぶ場はいくらでもあります。スポーツ栄養に携わりたいのなら、
もっとスポーツの世界に飛び込んできてください。私がお手伝いできることは喜んで
させてもらいます。
いつの日か栄養に関して全面的に信頼できる、ニュートリションコーチが誕生し、
一緒に仕事ができることを楽しみにしています。
<プロフィール>
ユニット代表 澤野 博

日本体育大学卒。社会人経験を経て欧州へ留学。
オーストリア・ザルツブルグ州にあったOlympiastuetzpunkt
Obertauernにて乳酸値を中心とした体力トレーニングを学んだ
唯一の日本人。世界トップレベルの競技者の体力トレーニング
管理も行う。
帰国後、部品となって競技者を支えるという意味で「Unit」を設立し、
競技種目、競技レベルを問わず、競技者の体力トレーニング指導を
中心に活動。
アメリカ・アリゾナ州にあるAthletes’ Performanceで、Mentorship
Phase 2を修了した数少ない日本人でもある。
NSCA-認定ストレングス&コンディショニングスペシャリスト、
JADA-ドーピングコントロールオフィサーだけではなく、国家資格である
臨床検査技師や教員免許も保有するフィジカルコーチ。
ユニットHP⇒ http://www.team-unit.com/