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アメリカ栄養士だより

第3回:登録栄養士になるためのインターンシップとは?

今回はアメリカで登録栄養士(以下RD)になるために必須条件であるインターンシップについてお話します。RDになるためには必ずCADE(Commission on Accreditation for Dietetics Education)認定のインターンシップ(Dietetic Internship:以下DI)を修了しなくてはなりません。最低でも900時間(6ヶ月)のDIが義務付けられていすが、1800時間以上(1年以上)も多く存在します。現役RDのサポートをマンツーマンで受けながら、臨床栄養・パブリック栄養・給食管理の3分野で仕事を行います。様々な分野で活躍するRDから直接仕事内容を教わるというのはアメリカのRDシステムの優れた点だと思います。私も様々な分野で働く20人以上の現役RDのもとで学ぶことが出来ました。

【インターンシップ(DI)に入る】

DIに入るためには、以下の2つの方法があります。

コーディネートプログラムの大学・大学院に入る

コーディネートプログラムは、RDになるための専攻がある大学・大学院にDIが組み込まれているものです。コーディネートプログラムのある学校に入ると、自動的にDIへの参加権利を得ることになります。

DPD(Didactic Programs in Dietetics)プログラム

DPDプログラムは、RDになるための専攻がある大学・大学院にDIが組み込まれていないものです。よって学校を卒業した後に、自分でDIに応募することになります。インターン生の採用は、全国一斉に年に2回行われます。出願者は成績・職務履歴書・小論文など、インターン受け入れ先が指定した書類を提出します。また、面接が課せられる場合もあります。出願数に制限はありませんが、全国共通のコンピュータマッチングのため、1人が2箇所から合格通知を受けることはありません。合格発表は同じく年に2回、全国一斉に行われます。

*条件によってはアメリカの大学卒業せずにインターンシップを終了する方法や、短期・不定期のインターンシップなどもありますが、一般的ではないのでここでは省略します。

【インターンシップ先の選び方】

上で説明した①のコーディネートプログラムは、DIへの参加が約束されているので便利な点も多いですが、プログラム内容は標準的な場合も多いと思います。一方、②のDPDプログラムを終了してDIに入る方法は、競争率が高い場合も多く、合格も全く保証されておらず不便な点も多いですが、様々な種類のDIから希望するプログラムに応募することが出来ます。例えば、知名度の高い病院・企業・政府団体によるDIに応募したり、将来の進路を決めている人は、特に臨床栄養に力を入れているプログラムを選んだり、給料が支給されるDIに応募することが出来ます。

【インターンシップの経験談】

ここからは、私の経験談をお話します。臨床栄養・パブリック栄養・給食管理の3つの分野を順に紹介します。

臨床栄養ローテーション

このローテーションでは、小児科、NICU(新生児集中治療室)、外科、SICU(外科集中治療室)、内科、MICU(メディスン集中治療室)、CCU(集中治療室)、精神科、外来栄養指導、リハビリ、火傷センター、透析センター、エイズ・HIVクリニックなどを周り、各専門分野の臨床栄養を学びました。最初に急性期緩和期の内科・外科で、カルテの読み方・書き方、栄養アセスメント方法などを学びました。乱雑なカルテを読むのに苦労したり、他の医療従事者の役割をよく理解していなかったり、学校で学んだ臨床栄養の知識を忘れていたり、見たことも無い医学用語に随分戸惑いましたが、なんとか少しずつ慣れていきました。急性期緩和期病棟で一通り仕事が出来るようになると、小児科や火傷センターなど、特殊な知識が必要なローテーションへと移行しました。更に、適切な栄養アセスメントが出来るようになると集中治療室系でのローテーションがはじまりました。このローテーションで診る患者さんのほとんどは栄養サポート(経腸・静脈栄養)を利用しているので、チューブ栄養やTPN(中心静脈栄養)に関するアセスメントが中心になりました。臨床栄養ローテーションでは専門分野の異なる8人のRDにお世話になりました。それぞれの仕事のスタイルや良い点・悪い点なども分かり大変勉強になりました。

パブリック栄養ローテーション

このローテーションでは、学校給食、州の行政栄養、食団体、WIC、子供糖尿病キャンプを経験しました。
学校給食ローテーションでは、献立作成、発注方法、キッチン設計、調理器具の選択などを学びました。数時間ですがキッチンにも入り、実際にどのように調理をしているのかも観察しました。また、子供たちと一緒にカフェテリアで食事をしました。私を受け入れてくれた、学校給食のRDは積極的な食教育で有名な人で、白パン、白米の代わりに雑穀パンや雑穀米の使用に努め、牛乳は全て低脂肪を使用し、学校の自動販売機ではソーダの代わりにフレーバー牛乳を販売していました。また、地元の有機野菜・果物を積極的に利用し、油で揚げた料理は一切作らないなど、こだわりのある食事を提供していました。更に、定期的に学校で栄養教室を開いたり、経済的なゆとりのない生徒の家族のために、週に一回、新鮮な果物や野菜を無料で提供していました。公立の小学校で、一人のRDの力量で学校給食をここまで改善できるのだと感動しました。

学校給食グリルサンド
写真は雑穀パンを使用したチーズのグリルサンドです。近いうちに、ホットドック用のパンも雑穀パンにするとのことでした。既にハンバーガーやピザには雑穀パンを利用していました。
州の行政栄養ローテーションでは、実際に施行・計画されている州の栄養政策について学びました。母子栄養・特殊疾病栄養・糖尿病・肥満・生活習慣病政策などを、それぞれの分野を担当するRDに説明してもらいました。州に住む人の文化・言語・所得レベルなどを考慮したプラグラムがいくつも実施されていました。RDのアドバイスを受けながら健康パンフレット作成などのプロジェクトも行いました。多くの人をターゲットにした、公的な印刷物を作成する難しさを実感しました。
食団体の視察は、全国乳製品協会、全国牛肉協会などで行われました。そこに勤務するRDに団体の活動内容やプロモーションについて説明してもらいました。公共的な健康政策、栄養リサーチ、食品企業のビジネスの利害関係が複雑に絡み合った現状を垣間見ることが出来ました。
WIC(Women, Infants, and Children)は、低所得の妊婦、5歳までの乳幼児向けの支援プログラムです。毎月USDAが栄養価が良いと認定している食品をスーパーなどで買うことが出来る無料クーポン券が発行されます。また、乳幼児を健康に育てるための栄養教育も提供してます。栄養リスクの高い受給者は、それぞれの施設に配置されているRDの栄養指導を受けるようになっています。プログラムの流れを観察し、私も栄養指導等を行いました。
子供糖尿病キャンプは、糖尿病の子供たちと一週間共に過ごしながら、栄養のクラスを開いたり、献立の管理などをしました。子供たちは、毎食炭水化物量を自分で数え、その炭水化物量に見合ったインスリンを注射します。インスリンパンプを使って、上手に血糖値をコントロールしている子供も多くいました。私も生理水を下腹部に注射してみたり、24時間実際に生理食塩水を使ったインスリンパンプを付けるなどの体験をしました。
栄養教室の子供たちの写真
私が行った栄養教室に参加した子供たちです。マイピラミッドについて説明しました。
糖尿病キャンプ朝食写真

この写真は朝食の一部です。紙には炭水化物量が書かれており、子供たちは計量カップを使って分量を測り、その炭水化物量に合わせたインスリンを投与します。アメリカでは血糖値のコントロールには炭水化物を重要視しています。また、子供でも自分でインスリンの投与量を調節しています。

給食管理

このローテーションでは、在庫管理、発注、予算管理、人事、従業員のタイムマネージメント、調理観察、献立作成などについて学びました。私は、日本の大学時代に給食実習をしましたし、調理師学校を卒業しているということで、このローテーションは特別措置で大変短いものとなりました。臨機応変なところもアメリカらしい良い点ではないでしょうか。

登録栄養士になるためのインターンシップの内容が伝わりましたでしょうか。アメリカの登録栄養士は、半年から1年ほど、現役RDからマンツーマンの指導を受けて学んでいきます。日本との大きな違いは、DI中に調理作業をすることはほとんどなく、臨床なら栄養アセスメント、パブリック栄養なら栄養政策、給食管理ではマネージメントが中心になっていることです。日本でもインターンシップが充実することを期待しています。次回からは、様々な分野で活躍する現役RDの様子をお伝えします。お楽しみに!


一政晶子(Akiko Ichimasa)
管理栄養士(日本)・米国登録栄養士。アメリカの急性期病院で働く現役臨床栄養士。調理師学校を卒業し、パーソナルシェフの経験もある。栄養士・管理栄養士向けの雑誌・ウェブサイト等での執筆活動、栄養関連コンサルトも行っている。また、個人サイトである、アメリカの食と栄養情報 AKI’S PLACEを管理している。
ウェブサイト:http://www.geocities.jp/louxaki

 

 

 

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