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アメリカ栄養士だより

第2回: アメリカの登録栄養士専攻の授業内容とは?

こんにちは、コラムを担当している一政です。今回は、アメリカの大学での登録栄養士専攻(Dietetics)の授業内容をお話します。「アメリカの栄養士は何を勉強しているのか?」、「日米の教育システムの違いは何?」といった疑問を解明していきます。

アメリカで登録栄養士(以下RD)になるためには、最低でも4年大学か大学院を卒業しなくてはいけません。ダイエットテクニシャン(栄養士)になるためには短期大学を卒業しますが、日本の様に経験を積んだからといって登録栄養士の受験資格を得ることは出来ません。

【専攻に入るために必須教養科目を学ぶ】

アメリカの大学では、メジャー(専攻)に入るために、まずは必須教養科目(prerequisite)を受講します。RDを目指す学生も最初に必須教養科目を受講します。日本でも教養科目を取得してから、専門科目を受講するのが一般的なので概念は同じです。日本との違いは、特に専攻を決めていなくても、教養科目の取得中に進路を決めたり、変更することが出来ます。登録栄養士専攻に入るためには、栄養学を学ぶ上で必要となる理系のクラスを中心に受講します。学校により多少違いはあると思いますが、一般的な必須教養科目は以下の通りです。

登録栄養士専攻に入るための必須教養科目
生物学、基礎化学Ⅰ、基礎化学Ⅱ、有機化学、生化学、微生物学、解剖生理学Ⅰ、解剖生理学Ⅱなど

ここでアメリカらしいのは、RDになりたい学生、医師になりたい学生、生化学専攻の学生、看護士を目指す学生など、誰でも同じクラスを受けることが出来ます。学生は授業のレベルを選ぶことができます。理系の教科が苦手な学生は、この教養科目取得中に挫折してしまいます。もちろん例外もありますが、アメリカのRDは栄養学には強いが、料理は得意ではないというのは、この辺にも理由があると思います。この必須教養科目からも想像されるように、「料理が好きだから」という理由だけでRDを目指す学生はまずいないと思います。日本の大学で既に必須教養科目を受講した学生が留学する場合は単位変換も可能です。学校によっては学生のレベルを保つために、他校の単位をあまり認めない場合もありますが、多くの大学は日本の単位をトランスファーしてくれるようです。また、基礎化学など一年次レベルの教科には単位免除試験(CLEPテスト)もあり、日本の大学入試で化学を選択した学生などにはお勧めの試験です。授業費・時間の節約になります。

【メジャーで専門科目を学ぶ】

無事に必須教養科目に合格すると専攻に入ることが出来ます。コーディネートなどプログラムの種類によっては、成績の審査がある場合もあります(注1)。また、RDになるためには、最低でも全ての成績が70%以上であることが必須です。RDになるための必須科目はDPD(Didactic Program in Dietetics)と呼ばれ、アメリカ栄養士会の機関(Commission on Accreditation for Dietetics Education)によって定められています。DPDは必修ですが、他の選択科目も受講します。やっと教養科目から開放されてホッとする学生も多い頃だと思います。しかし、現実は甘くなく!?徹底的に栄養学を学ぶことになります。卒業論文は課せられていませんし、臨地実習はインターンシップ中に行うので、学校では授業に専念します。ここで注目したいのは、日本とアメリカの大学の必修専門科目の違いです。日本では「食と栄養」を中心に学ぶ学校がまだ多いと思いますが、アメリカでは「人体と栄養」の関係を学びます。私が卒業したアメリカの大学では、一年次にある調理実習を除けば、日本では一般的な、調理科学、調理学、食品衛生学、給食経営管理実習、食品学、食品加工学などはありませんでした。学校により多少違いがありますが、一般的なDPDは次の通りです。

DPDと呼ばれる必須科目(必須教養科目も含む)
テクニカルライティング、心理学、統計学、社会学、化学Ⅰ・Ⅱ、化学実験Ⅰ・Ⅱ、有機化学、有機化学実験、微生物学、微生物学実験、解剖生理学Ⅰ・Ⅱ、解剖生理学実験Ⅰ・Ⅱ、生化学、生化学実験、基礎栄養学、人間栄養学、基礎臨床栄養学、給食経営学、給食管理学、栄養指導、臨床栄養学、応用人間栄養学Ⅰ・Ⅱ、人間栄養アセスメント、人間栄養実習、地域栄養学

注1:プログラムの種類はインターンシップと関連があります。インターンシップに関する内容は次回説明させて頂きますので、今回は割愛させて頂きます。

【アメリカならではの専門科目の内容】

日本から留学してくる学生にとって、特に興味深いと思われる3つのクラスを紹介します。日本で食物栄養学を中心に学んだ私にとって、人間栄養学はとても新鮮なものでした。最近では、日本でも人間栄養学を重視する動きがみられるようです。私はアメリカの大学に編入する少し前に、免除科目無しの全科目受験によって日本の管理栄養士資格を取得しました。管理栄養士のテスト対策をして間もないうちに、登録栄養士になるための勉強をはじめたので、管理栄養士と登録栄養士が重要視する分野の違いを肌で感じました。アメリカで授業を受けてみて、人間栄養学を全く理解出来していないことが分かりましたし、とても大切な学問であることを身をもって感じました。

応用人間栄養学
大学での必須履修科目で特に面白かったのは、応用栄養学Ⅰ・Ⅱでした。体と栄養素の詳細を学びます。応用栄養学Ⅰでは、主要栄養素とヒトについて、Ⅱでは微量栄養素とヒトについて学びます。生化学や解剖生理学などの知識をフル活用しながら、体のメカニズムが理解でき面白いクラスでした。このクラスはとても難易度が高いため、多くの学生が授業を録音して、自宅で復習に取り組んでいました。テストもとても難しく、生徒の実力を確実に測るために、論文式の問題が多いのが特徴的でした。「なんとなく理解している」というのが全く通用しないクラスでした。
この写真は応用栄養学Ⅰ・Ⅱで利用したテキストです。バインダーに整理されているテキストは、担当教官が作成したもので授業の流れに沿った内容になっています。1ページも飛ばすことなく、じっくり学んでいきます。後方にあるのは教科書です。アメリカの教科書の厚みは半端ではありません。
臨床栄養学
日本にいたときには、「臨床栄養」という言葉さえも理解していなかったのだと思わされた授業でした。栄養指導・療養食の作成に必要な知識が臨床栄養だと思っていました。アメリカでは栄養アセスメントに必要な知識を学びます。体の部位別の疾病・症状、検査値、疾病と栄養の関係などを徹底的に学びます。またチューブ栄養、静脈栄養の使用基準、計算方法なども学びます。取り扱う疾病の種類がとても多く、暗記するべき内容も多すぎて気が遠くなるようなクラスでしたが、臨床栄養士を目指していた私には非常に面白い授業でした。このクラスも応用人間栄養学と同じく、落第している学生が目立ちましたが、日本から留学する学生には、絶対に役立つクラスだと思います。学生の時は「こんな細かい内容は、栄養士が理解する必要がないのでは?」と思うこともありましたが、臨床栄養士として実際に働いてみて、授業内容の適切さが分かりました。
人間栄養アセスメント
人間栄養アセスメントの授業もとてもよかったです。実際に自分の体を使ってアセスメントします。常に自分が実験台となり、採血・採尿・食事コントロールなどをします。例えば、摂取タンパク質量を変えることにより、体のタンパク質代謝がどのように変化するかを採血・採尿の結果等に基づきアセスメントしました。教科書通りの明解な結果が出ない事も多く「なぜなのか?」を徹底的に考えるアセスメントが多かったです。栄養代謝のしくみをしっかり理解していないと、考察の内容が甘くなるので、すぐに減点の対象になりました。その他にも、血糖値について学ぶクラスでは、高血糖・低血糖を実際に経験しながら、気分が優れない学生が続出するなか、何度も指を刺して血糖値を測定するなど、記憶に残る実習が多かったです。全ての実験の結果・考察等はきちんとペーパーにまとめなくてはならなく、5㎝程の厚さになりました。とても大変だったのですが、今となっては分厚いレポートも思いでの一品です。
この写真は人間栄養アセスメントの内容をまとめたフォルダーです。私自身の情報が詰まっています。論文形式の記入が必須で、参考文献の引用・ページの振り方など細かいルールに応じたレポートが義務付けられていました。形式が誤っている場合は、容赦なく減点対象となりました。

いかがでしたでしょうか?アメリカでの学生生活は大変そうにみえるかもしれませんが、とても有意義な時間を過ごすことが出来ました。次回は登録栄養士になるためのインターンシップについてお話させて頂きます!


一政晶子(Akiko Ichimasa)
管理栄養士(日本)・米国登録栄養士。アメリカの急性期病院で働く現役臨床栄養士。調理師学校を卒業し、パーソナルシェフの経験もある。栄養士・管理栄養士向けの雑誌・ウェブサイト等での執筆活動、栄養関連コンサルトも行っている。また、個人サイトである、アメリカの食と栄養情報 AKI’S PLACEを管理している。

ウェブサイト:http://www.geocities.jp/louxaki

 

 

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