ショクライフTOP > 栄養士の働き方 > 有料老人ホーム・高齢者向けマンションを展開する企業の本社で働く管理栄養士

有料老人ホーム・高齢者向けマンションを展開する企業の本社で働く管理栄養士

2014年07月23日

S.Mさん
<経歴>
H16年大学卒業後、管理栄養士取得。病院の栄養課で調理現場、
栄養事務、NSTメンバーとして栄養管理を担当。
H19年から有料老人ホームをはじめとする高齢者マンションを展開
している企業本社の栄養士として勤務。  

◇ハウスとは。

展開している有料老人ホームをはじめとした高齢者向けマンションを
「ハウス」と呼んでいます。これは運営するホームに“暮らしが息づく”
という意味が込められていることからです。全国にハウスは25あり、
そのうち2ハウスが準備中です。ハウスでの喫食数は約30食、
多いところでは140食 / 回提供するところもあります。
ハウスの厨房は直営、委託業者半々です。ワーカーズコレクティブに
お願いしているハウスもあります。(*ワーカーズコレクティブ・・・元気に
暮らすための「食」・楽しい子育て・人をつなぐ情報提供とコーディネート・
障害のある人たちとの働き場づくりなど地域のニーズに応えるために
共同で起業)提供している食事のメニューはハウスごとに違います。
ハウスの栄養士が献立を立てる場合もありますし、委託先の栄養士が
立てることもあります。その場合は、ハウスの栄養士が必ず確認します。
地域によってだしや味噌が違うという特性があるので、本社で立てた
同一メニューをハウスに流すのではなく、各ハウスで入居者さんの嗜好や
地域の特性に合わせた献立を提供するようにしています。本社で作成した
統一の献立では、入居者さんの要望を活かしきれません。ハウスごとの
献立だと入居者さんからの要望を翌週の献立に反映させるということも
できます。あるハウスでは、入居者さんから「近所においしいオムライスの
お店があるから行ってみなよ。」と言われた栄養士が、お店に食べに行き、
その味をハウスで再現し、他の入居者の方々にも喜んでいただいたと
いうこともありました。 

環境の良い職場です。

人間関係のよいところが大変気に入ってます。栄養士は本社に私を含め
2名、各ハウスには1~2名の栄養士がいます。スタッフ同士の仲がとても
いいです!前職では人間関係に苦しんだので、現職の人間関係のよさに
本当に救われています。社長の人柄もよく働きやすい職場です。
恵まれています。

仕事の内容を教えて下さい

ハウスとの調整役や、ハウスに出向いて厨房に入ることもあります。
ハウスの栄養士が足りないときは、現場に入って2ヶ月間ハウスの
専属栄養士として働き、お正月料理を作ったりしたこともありました。
月に1度開かれるイベントの手伝いに行くこともありまし、問題が
起きれば現場に出向いてアドバイスもします。なんでも屋です(笑)。

新しい企画の立案や献立ソフトのカスタマイズなども行います。
パソコンはもともと苦手だったので、献立ソフトのカスタマイズは
会社に入ってからの一番の壁でした。業務は多岐に渡ります。
月に1度ハウスの栄養士が本社に集まりミーティングを行います。
その時の調整役もします。このミーティングは、各ハウス間の
情報交換の場にもなっています。入居者の状況は時間が経つ
につれて変化するので、ハウスでの悩みも変わってきます。
他のハウスではどのように対応しているかなどを相談する
よい場になっています。

介護予防のための栄養改善への取り組みも重要な仕事です。
要介護の方はファイルを作り管理していますが、要支援の方が
低栄養になった場合、どのようにして抽出するかというのが
問題です。年2回の検査データ、提携医療機関でのコメント取り、
体重減少などをチェックしながら早めに栄養状態を見極めて
いかなくてはいけません。各ハウスにキッチンがついており、
自炊している入居者の方は、食事摂取状況が把握しづらいので
今後の課題です。
事務作業でがんじがらめになった時は、現場に入って体を動かし
バランスをとり楽しみながら仕事をしています。あちこち動き回って
疲れ果ててしまうこともあるのですが(笑)

いちばん苦労したこと。

新ソフトの導入が大変でした。今も作業は続いていますが、苦手分野
だったので献立ソフトのカスタマイズ作業は苦労しました。各ハウスの
献立、作業工程が異なるので1つのソフトに落とし込むのは大変でした。
後々の献立作成や発注業務、帳票作成などに影響しますから・・・。
もう山は乗り越えたのですが、とても辛かったです。辛く大変だった分、
現場の人から献立から帳票作成までにかかる時間が今までの半分になり、
助かったといわれたことはとても嬉しかったです。

今後の展望

新ソフト導入で、現場から業務量が半分になったと言われたときは、ほんとに
嬉しかったし、効率化が図れたと思いました。時間が短縮できたということは
それぞれのハウスで出来るようになることも増えるということですから。
上司も評価してくれています。
この作業を通して、自分の自信にもなったしやりがいも感じました。
現場では、手作りおやつを提供したところ、普段あまり目や口をあけてくれない
入居者さんが、手作りおやつを提供したところ、目をあけて自分から進んで
食べてくれたことがありました。涙が出るほど嬉しくてこの仕事をやっていて
よかったと思いました。介護スタッフの人が「●●さんが目あけて、食べてる!」
ってびっくりして報告してくれました。食の力の大きさを感じた、感動のシーンでした。
ま、そういう時って少ないですけどね(笑)でも、そういうことがあるからがんばれます。

今後はソフト食の開発にも力を入れていきたいです。味だけでなく、見た目も良いものを
開発しています。プリン系のソフト食はよくありますが、プリン系ではなくテリーヌにして
ソースをカラフルにし、普段の食事に近いかたちで提供したいと思います。
そのためには、調理師さんとの協力が大切になってきます。本社と現場の仕事をバランスを
とりながら進め、これからもやりがいや楽しみをみつけていきたいと思います。

★編集後記★

趣味で3回/週ランニングをされているSさん。本社勤務の栄養士という立場上
各ハウスの問題解決も大切な仕事のため相談を受けたり、ぐちを聞いたりすることが
多くなり、Sさん自身にもストレスがたまることが・・。そんな時には走ってストレスを解消!
マラソン大会にも出場される本格的なランナーです。マラソンを始めたことで、運動の
楽しさに目覚めたとのこと。本社と現場での仕事、そしてマラソンと上手にバランスを
とりながら、毎日を充実させていらっしゃるSさんの笑顔はとても素敵でした。
また、事前にショクライフのこのコーナーをご覧頂き、お話しをまとめてきて下さる気配りも。
その準備性とお心遣いにとても感動しました。
Sさん取材に御協力頂きありがとうございました。