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北信州の自然の恵みと伝統の食文化、幻の食材 ─長野県飯山市─

2015年03月10日

【日本一の長寿国、長野県長寿の秘訣とは!?】

2013年に厚生労働省が発表した都道府県別平均寿命ランキングで、長野県が男女ともに1位になり話題を呼びました。

また、2006年から2010年の長野県の悪性新生物(がんなど)による死亡率は、男性が全国47位と最も低く、女性も46位だそう。

そんな長寿県で知られているが、実は塩分摂取量はワースト1、2を争う長野県。長寿の秘訣はなんだったのでしょうか。

信越自然郷と食文化

長野県民の健康には食と自然が大きく関わっているようです。
南北に長い長野県の中でも、食の伝統と自然とが豊かな北信州飯山市を中心にご紹介します。

長野県のもっとも北に位置する飯山市、そしてその周りの妙高市・中野市・山ノ内町・信濃町・飯綱町・木島平村・野沢温泉村・栄村の9市町村を「信越自然郷」と命名。

この地は「みゆき野」とも言われ、その名の由来は、美雪(美しい雪)、深雪(深い雪)などがあり、昔から生活において雪と関わりが深く清冽な雪どけ水が流れる地域です。

冬には、ゲレンデに多くの人々が訪れ、私もその一人。ウィンタースポーツを楽しんだら、温泉と美味しいご飯を堪能。これほどの贅沢はありません。

日本一長い千曲川(信濃川)が流れることでも知られる飯山市。澄んだ空気と水、四季のはっきりとしている気候、厳しい寒暖差が豊かな旬の恵みを育み、日本有数の豪雪地帯ながら、春の山菜や夏野菜、秋のキノコや果物、山の実など、四季折々の農作物や豊富な自然食材に恵まれています。

厳しい冬に備え、先人たちは知恵を絞ってその恵みを活かし、独特の食文化を育んできました。古来からの伝統の味として多くの郷土料理が今なお受け継がれています。

長寿の秘訣

長野県は、野菜摂取量も男女ともに全国1位。野菜には塩分を体から排出するカリウムが大量に含まれており、たくさん食べることで健康が維持されているのでしょう。

過酷な環境で栽培された植物は、がんの原因にもなる活性酸素を抑えるための抗酸化作用を高める栄養素、ファイトケミカルをより多く含んでいます。また、長野県はきのこの生産量も日本一。きのこにもファイトケミカルが多く含まれてます。

生産量、消費量ともに日本一の信州味噌や伝統食の野沢菜漬けも良いようです。信州味噌にはメラノイジンという物質が大量に含まれ、メラノイジンには強力な抗酸化作用があり、がんの予防に役立ちます。

長野の食文化は長寿力の塊をたくさん食べているようなもの、といっても過言ではありませんね。

また、「減塩運動」や「野菜を食べようキャンペーン」などの啓蒙活動がさかんで、さらに、「生きがいを持った暮らし」といった取り組みも積極的に行っており、『健康長寿』県となるべく力を入れています。

【飯山市の幻の食材と郷土料理】

幻のそば 飯山富倉そば「幻のそば」とも言われ、飯山市富倉地区に伝わる郷土料理で、つるつるとしていて、のどごしがいいのが特徴。かつて、つなぎに使う小麦の栽培ができなかったことから、「オヤマボクチ(山ゴボウ)」という野生植物の葉から取り出した繊維をつなぎに使ったそばです。

この繊維を取る作業はかなり手がかかる上、取り出せる繊維は葉っぱ1kgで、わずか4~5g。そのため作り手も少なくなっています。

飯山の人々のそばへの情熱とこだわり、美味しくそばを食べてほしいという思いはひと際強く、生まれながらこのそばを食べている私の祖父は、ゆで加減にうるさく、一口目はつゆにつけずにそば本来の味を味わうように、とよく言っていました。

飯山のそば屋に行った際の、「こんなに美味しいそ・ば・が、こんなにそ・ば・にある」と書かれたポスターが印象的でした。

いもなますの作り方

~ 信州いいやま観光局HP「語り継ぎたい飯山の郷土料理」より(レシピは筆者加筆あり)~

〈材料 4人分〉
・ジャガイモ(男爵イモが最適)  中2個
・油  大さじ3
・酢  大さじ3
・砂糖 大さじ4
・塩  大さじ1/2

〈作り方〉
①ジャガイモの皮をむき、細い千切りにする。(スライサーで薄切りにしてから、千切りにすると細く切れる)
②千切りにしたジャガイモを2時間以上水にさらし、デンプンを取り除く。
③さらしたジャガイモをざるにあけ、水をよく切る。
④油を熱した鍋にジャガイモを入れ、全体的に油を回す。
⑤酢を加えて、さっと混ぜ、砂糖・塩の順に加えて水分がほとんどなくなるまで炒める。
(砂糖を加えると、煮汁にとろみが出る。それをよく絡めるように混ぜながら炒め、汁気を少し残すことでツヤが生まれ、きれいに出来上がる)

ご家庭で簡単に作れますのでどうぞお試し下さい。