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日本のこころ、和食の智恵シリーズ⑦ ~旬の野菜12ヶ月/季節の特徴とカラダを労る食材たちの関係~

2015年04月14日

4月、早くも3分の1が過ぎました・・・
春の季節の言葉に『春愁(しゅんしゅう)』という言葉があります。
「春」の「愁い(うれい)」という意味ですが、新しい季節でやる気
満々の季節には似合わない様な気もしますね(^_^;)

新入社員なら毎日新しい課題に追われる季節。
引っ越しをして、慣れない街での暮らしは不安も多いことでしょう。
転勤や配置換えで新しい環境に挑戦している方々もいるかも
しれません・・・

考えてみれば、新しく動き出す時は不安になる要素も多いもの。

季節の言葉になるくらい遠い昔から、この季節には誰もが少なからず
「春愁」を抱えていたのでしょう・・・立場はいろいろでも皆、同じように
「愁い」を抱えていると思えば逆に気持ちも晴れる気がしませんか?

あえて「愁い」を季節の言葉にすることで「励まされている」思いが
湧いてくることに不思議な感じがします。


さて、今回の《日本のこころ、和食の知恵》は
『旬の野菜(食材)12ヶ月/季節の特徴とカラダを労る食材たちの関係』
というテーマでお送りしてまいります。

土産土法と和食

先回、『食文化の背骨・土台には「土産土法」と言う考え方がある』と言う
内容を書きました。栄養学の世界からは少し離れてしまう言葉ですが、
「食文化」「食生活」と言う「食べる営み」を考えるとき、現代の栄養学に
こそ補完という意味で必要だと思うのです・・・

また、世界文化遺産に登録された「和食」の4つの特徴のうち3つが
自然環境や季節ごとの食材と食文化についてが評価されています。
そう言いう意味でもその土地の気候風土と健康的な食生活というのは
密着していると捉えるのが自然なのだと思います。


日本の気候風土の特徴は何と言っても《四季》があるところですね。
季節ごとに旬の野菜(食材)が違うのですが、季節ごとの特徴と
その時に採れる食材の関係は栄養学的に見てもとても理にかなって
います。

旬が旬である理由があるのです!

まずはその全体像を見てみましょう!!

季節の特徴とカラダを労る食材たち

◇春の特徴

春は長く続いた「寒い冬」が終わりを告げ、穏やかな暖かさとともに
生命の息吹が一気に芽を出す季節です。

カラダは寒さに耐え忍び、縮こまった状態。代謝も鈍くなっているので
動き出すための「刺激」が欲しくなってきます。

そのことが分かっているかの様に、春先は木の芽や花の芽の類の
食材がどんどん出てきます。いわゆる「芽のもの」ですね!


菜の花、ふきのとう、うど、タラの芽、ふき、せり、筍、、アスパラガス、
つくしやのびる、こごみなどなど

芽のもの、山菜類には「苦味」の強いものが多いですが、それらには
ビタミンCやポリフェノール、各種ミネラル類を多く含み春先の寒さで
体調を崩さないように、春の紫外線から身を守るように、代謝を活性化
させてカラダの中から動きやすくなるように・・・

春には春のカラダを労ってくれる食材たちで賑わいます。



◇夏の特徴

日本の夏は高温多湿で蒸し暑い!
消化吸収を担う胃腸にも負担が大きくなる季節・・・
暑さに打ち勝つエネルギーが必要なのに、胃腸が弱ると
食欲が落ちて食べられなくなり、夏バテになってしまう・・・

そして、この時期はとにかく汗で水分とミネラルを失い
やすいことを知っているかの様に夏野菜はたっぷりの
水分とたっぷりのビタミン・ミネラルを含んでいます。

トマトやきゅうりなどのウリ類、ピーマンや茄子を代表に
果物たちもたくさん実がなります。スイカやメロン、
ぶどう、なし、ももなどなど・・・

失った水分とミネラル、代謝に必要なビタミン類を効率的に
補給できる食材たちがたくさん採れる季節です。

更にご飯(お米)を食べるのが億劫になる季節なので
サラッと食べられるそうめんやひやむぎなどの麺類が活躍
します。

サラッと食べても消化を助け、食欲を刺激してくれる「薬味」
となる生姜、みょうが、わさびにネギ、そして大葉などなど・・・

麺類で燃料となる「でんぷん」を野菜や果物で水分とビタミン
ミネラルを補給できる様になっています。



◇秋の特徴

秋といえば収穫の秋、実りの秋。
お米やイモ類、木の実類など「でんぷん」を多く含む食材たちが
たくさん採れます。

秋は夏の疲れを癒やし、やがて訪れる寒い冬に備える季節。
疲れたカラダを労る食材たちは味わい深くこころもカラダも
癒してくれます。

そして、お米もイモ類も木の実類も保存がきく食材。
来るべき冬に備えて脂肪をカラダに少し蓄えつつ、
日々食べる食材も蓄える季節です。



◇冬の特徴

夏の蒸し暑さとは打って変わって、厳しい寒さが訪れる日本の冬。
お正月から春先までは「霜枯れ時」と呼ばれ、あまり作物が育ち
にくい季節・・・

「寒さ耐える」 これが日本の冬の特徴です。

この時期に採れる根菜類(ダイコン、ごぼう、人参、れんこん)は
煮物にして温めることで味わい深くなるものです。
寒さに耐えるこの時期に「温めて美味しくなる食材」はこころも
カラダも癒してくれます。

そして、冬はカラダの代謝も鈍くなりがちな季節です。
冬は根菜類の他に青々としたビタミンの多い葉もの野菜も
多く採れる季節でもあります。

また、柑橘類の果物やりんごなども代謝を助けるビタミンや
ミネラルを多く含んでいる食材です。
その寒さの中でカラダの動きは鈍ります。

季節の変化の中で「生きる知恵」が「食べる知恵」に

春には春の
夏には夏の
秋には秋の
冬には冬の

季節の特徴があり、
対応するカラダの変化があり、
そのカラダを労る食材たちがある。

これが日本の食文化を形作ってきたと言えるでしょう。
お互いがお互いを必要として出来上がった「食の形」
とも言えるでしょうか?

この形ができるまでの「試行錯誤」の間は大変な事も
多かったと思いますが、「もったいない」「いただきます」
「ごちそうさま」のこころがあったからこそ世界に評価
される食文化が出来上がったのだと思います。


夏の暑さで食べられなくなることをおそれ、
秋にたくさんの実りを願い、
冬の寒さも生き抜く保存法を作り上げ、
春を迎えられた喜びを感じる。


そうした「生きる知恵」が「食べる知恵」になっていたのが
日本の食文化なのだと思います。


日本人が命がけで作ってきた食の形、食の知恵を
現代の栄養学と融合させて、もっともっと豊かな
食文化の創造につながっていくことを願ってやみません。



おしまい