ショクライフTOP > 栄養士の知恵袋 > 切っては入れ、切っては入れで食べる「おっきりこみ」 ─群馬県─
切っては入れ、切っては入れで食べる「おっきりこみ」 ─群馬県─
2015年05月12日
【江戸時代から農家主体の絹産業を支えた影の立役者】
皆さん、群馬県と聞くとなにが思い浮かぶでしょうか。草津温泉があるところ、と聞くとわかるかもしれませんが、認知度はまだまだ低い群馬県。住めば都、ものは安価ですし、災害は少なく、住みやすいことこの上ない。農作物も豊富に取れる、実り豊かな地域。それが群馬県。
群馬県は粉もの食が非常に多く、長い間食べられてきました。その代表格が「おっきりこみ」です。焼きまんじゅうとは違い名物と認識されていないのが非常に残念なところ。呼称は「切っては入れ、切っては入れ」食す様子から、自然とこの呼び名がついたとされています。
うどんやほうとうとの違い
具に芋類を加えることがありますが、赤城山や榛名山の山麓部ではサトイモが使われ、吾妻郡や多野郡の山間部ではジャガイモがよく用いられます。そして、サツマイモやカボチャといった甘いものは一般的ではないのが山梨県の「ほうとう」と違うところでしょうか。また旧中里村や嬬恋村では、蕎麦粉で作った麺を使うこともあったようです。
うどんとの違いは、麺に塩を加えないこと、麺をつゆに入れる前にゆでないことが挙げられます。また、生麺のままゆでるため、打ち粉が溶け出してつゆにとろみが出る。かつては小麦粉の質にも差があり、おっきりこみにはふすま(小麦の糠ぬか)が含まれるものも使われていました。
「うどん」はハレ食/「おっきりこみ」は日常の健康食
おっきりこみはとにかく具沢山です。しかも、野菜や麺のゆで汁もすべて摂取するので、水に流れやすい水溶性食物繊維やカリウムなども効率的に取ることにつながります。これらは生活習慣病を予防する大切な栄養素で現代人に不足している代表的な栄養素といえます。郷土食には健康につながるヒントが散りばめられていますね。肉や卵を入れる家庭もありますので、一杯の茶碗で主食・主菜・副菜をまかなうことも容易にできます。
また2日目(たてっかえし)になると、トロッとしていて冷めにくく体がとても温まり、消化もよいことから、私は学生時代には夜食として随分お世話になりました。
郷土料理とはその土地の生活に沿って長い歴史の中で育まれてきました。これは生活環境が多様化し生活習慣病がはびこる現代だからこそ見直したい先人の知恵でした。今回のおっきりこみ。呼び方・材料などが微妙に違うものも全国各地に存在しています。各地域の特徴を見ていくのも、とてもおもしろいかもしれませんね。
【おっきりこみ】 材料
<材料1人前>
平打ちうどん 1玉(280g)
鶏肉 30g 大根 50g
にんじん 10g ごぼう 10g
白菜 40g しめじ 10g
しいたけ 10g 里芋 40g
ねぎ 15g サラダ油 2g
だし汁 360cc 濃口しょうゆ 大さじ2
みりん 小さじ1 調理酒 小さじ1
【おっきりこみ】作り方
1.材料を食べやすい大きさに切る。
2.鍋にサラダ油をひき、材料を強火で炒める。
(うち粉がついていないうどんを使う場合は、
片栗粉か小麦粉をひとつまみ入れて下さい。)
3.全体がしんなりとしたら、鍋にだし汁と
濃口しょうゆ、みりん、調理酒を入れ、強火で煮る。
4.煮立ったらうどんを入れ、10分~ 15分中火で煮る。
5.お好みで七味唐辛子、柚子こしょうを添
えてお召し上がりください。
※ ねぎは、群馬県産の下仁田ねぎを使用すると
より甘みが強くなりおすすめです。
4.煮汁が少なくなったらみりんを入れ、煮汁が全体に
全体にからめられるようになるまで煮る。
(混ぜると魚が砕けるので混ぜない)