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日本のこころ、和食の智恵 2-3 ~二十四節気の『夏』と『5月』について②~

2015年05月22日

皆さん、こんにちは。
和食の知恵を1300年使われてきた『季節』と『暮らし』の《目印》である
二十四節気と七十二候を参考に紐解いていく和食の知恵シリーズ2ndステージ。

先回は5月からはじまる日本の夏(5~7月)の全体像を二十四節気と七十二候の観点から整理してみました。今回からはその月のその週がどの様な季節で、日本人はこの時季をどの様に捉えて生活してきたのか?を整理していきます。

そして、その中に脈々と息づく「食生活」「食文化」に光をあてて現代の日本人にとっても活用出来る「食の知恵」「生きる知恵」を浮かび上がらせて行きます。

『初夏』、5月の二十四節気 おさらい

5月は『初夏』
二十四節気では
5月5日~20日頃を『立夏(りっか)』
5月21日~6月4日頃を『小満(しょうまん)』
と目印の言葉を当ててあります。

『立夏』と『小満』はこんな季節です・・・

『立夏』 光風と呼ばれる爽やかな風が木々の間を吹き通る季節。
     新緑が深緑へと深さを増す時季。この頃から『夏』が始まります。
     夏至までの間、一年間で日照時間がどんどん長くなるこの時季。
     心身ともに軽快な動きになるのは太陽の光によって体内で作られる
     ビタミンDがカルシウムの吸収を助け、体調が整っていくから。
     健康管理のために旬の食材をたっぷりいただくことと、屋外で日光を
     浴びることが大切な季節となっています。

『小満』 「小満」とは万物が次第に長じて天地に満ち始めるという意味。
     蚕が眠りから目覚めて桑を食べ始め、麦の穂も伸び、麦刈や田植え
     の準備が忙しくなる時季。
     梅雨が大地を潤し始める頃であり、完全に夏の季節となります。
     爽快感に満ちて心も身体もフル稼働。仕事に勉学に励むことが出来ます。
     この時季の食材は疲労回復や体調を整えるビタミン類が豊富なものが多くなります。
     魚介類ではカツオ、野菜ではらっきょうやみょうがといった「薬味」になる
     食材が、そして果物では梅、メロン、さくらんぼなどなどビタミンの豊富な
     食材が私達の生活を支えてくれます。



『初夏』、5月の二十四節気と七十二候

◇「立夏(りっか)」の七十二候
・初候:蛙始鳴(かわずはじめてなく)5月5日頃
蛙が鳴き始める頃。水田の中をスイスイ泳ぎ、活発に活動を始めます。
「かわず」は蛙の歌語・雅語。
・次候:蚯蚓出(みみずいずる)5月10日頃
みみずが地上に出てくる頃。畑土をほぐしてくれるみみずは、動き始めるのが少し遅めです。
・末候:竹笋生(たけのこしょうず)5月15日頃
たけのこが出てくる頃。たけのこは成長が早く、一晩でひと節伸びると言われています。

◇「小満(しょうまん)」の七十二候
・初候:蚕起食桑(かいこおきてくわをはむ)5月21日頃
蚕が桑の葉を盛んに食べだす頃。蚕がつむいだ繭が美しい絹糸になります。
・次候:紅花栄(べにばなさかう)5月26日頃
紅花の花が咲きほこる頃。紅花は染料や口紅になり、珍重されました。
・末候:麦秋至(むぎのときいたる)5月31日頃
麦の穂が実り始める頃。「秋」は実りの季節を表し、穂を揺らす風は「麦の秋風」。


「蛙始鳴(かわずはじめてなく)」と「蚯蚓出(みみずいずる)」に息づく和食の知恵

◇「蛙始鳴(かわずはじめてなく)」5月5日頃~
 
春先に冬眠から醒めてもしばらくは眠そうだったカエルがようやく鳴き声を聞かせ始める時期です。GWを境に田植えが終わると一気にカエルの鳴き声が響き渡るようになりますね。
 
朝夕の肌寒さが和らぎ、夏に向けて生き物の活動が活発になっていきます。そして、それは人間も同じ・・・「春眠暁を覚えず」といったぼんやりとした気分から、光眩しい夏にむけて気分が切り替わるのもこの頃なのだと思います。


◇「蚯蚓出(みみずいずる)」5月10日頃~
 
「冬眠していたミミズが地上に這い出してくる」と言う意味の言葉。土中で越冬した動物が起きだしてくる時期としては、3月上旬の「啓蟄(けいちつ)」が一般的ですが、ミミズはどうも他の生き物よりも目覚めが遅いようです。
 
この頃から畑や花壇の土を掘る仕事が多くなりますがまだ眠そうに横たわっているミミズに出くわすこともあることでしょう。このミミズやカブトムシの幼虫などが居る土は良く肥えて良い土なので花や実がよくなることでしょう。


◇旬の食材
・野菜:さやえんどう、アスパラガス、アーティチョーク、ふき、らっきょう など
「えんどう豆」を早取りしたものを「さやえんどう」といい、更に小ぶりなものを「絹さや」と呼びます。すまし汁の具材や煮物の青みとして重宝する食材ですね。

アスパラガスは江戸時代に観賞用として伝えられ、明治時代に入ってから食用として栽培されるようになった食材です。土寄せして日光に当たらない様にして育てたものを「ホワイトアスパラガス」、土寄せせずに日光にあたって伸びた緑の若芽は「グリーンアスパラガス」となります。
さっとゆでてサラダにしても良し、炒めものにしても美味しい旬の食材です。

・魚介:石持、黍魚子 など
石持は白身魚で多くの調理方法に合いますが、かまぼこの原料として活用されることの多い魚です。黍魚子は温かい海で穫れる鰯の一種。とても鮮度の落ちるのが早い魚ですが、とれたてを刺し身にした「菊花づくり」は鹿児島の名物料理です。丸干しや唐揚げもよく食べられる料理です。


◇和食の知恵
この時期にしか採れないらっきょうは、たまねぎ・にんにくなどにも含まれるアリシン(硫化アリル)が多く含まれています。アリシンは、ビタミンB1の吸収を助ける効果があるので、ビタミンB1を含む他の食材と合わせると効果的です。

ビタミンB1には疲労回復、夏バテなどに効果があり、これから暑くなるこの季節にピッタリです。また、たまねぎやにんにくのように血液をサラサラにする効果があります。

カレーライスに良く添えられる「らっきょう漬け」はこのらっきょうを長期保存して長く味わう和食の知恵から生まれたものです。らっきょうはその栄養価の高さから「畑の薬」とも呼ばれている食材。酢漬けや甘酢漬けにしてらっきょうそのものをそしてらっきょう酢も無駄なく活用出来る貴重な保存食です。


◇夏の始まりのこの季節。

春の眠気から活動的になるこの時期に相応しい言葉が季節の「目印」として使われてきました。
そしてこの時期にとれる食材もそうした「活動」を支える食材がどんどん出てくるのが特徴です。

目と耳と味覚をフル動員してこの季節を味わいたいものですね!!