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日本のこころ、和食の智恵 2-4 ~二十四節気の『夏』と『5月』について③~

2015年05月29日

皆さん、こんにちは。
和食の知恵を1300年使われてきた『季節』と『暮らし』の《目印》である二十四節気と七十二候を参考に紐解いていく和食の知恵シリーズ2ndステージ。

今月は日本の夏(5~7月)の初夏、5月の二十四節気と七十二候について解説を進めて参りました。今回は立夏の終わりから小満のはじまりの時期、「竹笋生(たけのこしょうず)」と「蚕起食桑(かいこおきてくわをはむ)」についてお届けします。

そして、その中に脈々と息づく「食生活」「食文化」に光をあてて現代の日本人にとっても活用出来る「食の知恵」「生きる知恵」を浮かび上がらせて行きます。

『初夏』、5月の二十四節気 おさらい

5月は『初夏』

二十四節気では
5月5日~20日頃を『立夏(りっか)』
5月21日~6月4日頃を『小満(しょうまん)』
と目印の言葉を当ててあります。

『立夏』と『小満』はこんな季節です・・・

『立夏』 光風と呼ばれる爽やかな風が木々の間を吹き通る季節。
     新緑が深緑へと深さを増す時季。この頃から『夏』が始まります。
     夏至までの間、一年間で日照時間がどんどん長くなるこの時季。
     心身ともに軽快な動きになるのは太陽の光によって体内で作られる
     ビタミンDがカルシウムの吸収を助け、体調が整っていくから。
     健康管理のために旬の食材をたっぷりいただくことと、屋外で日光を
     浴びることが大切な季節となっています。

『小満』 「小満」とは万物が次第に長じて天地に満ち始めるという意味。
     蚕が眠りから目覚めて桑を食べ始め、麦の穂も伸び、麦刈や田植え
     の準備が忙しくなる時季。
     梅雨が大地を潤し始める頃であり、完全に夏の季節となります。
     爽快感に満ちて心も身体もフル稼働。仕事に勉学に励むことが出来ます。
     この時季の食材は疲労回復や体調を整えるビタミン類が豊富なものが多くなります。
     魚介類ではカツオ、野菜ではらっきょうやみょうがといった「薬味」になる
     食材が、そして果物では梅、メロン、さくらんぼなどなどビタミンの豊富な
     食材が私達の生活を支えてくれます。


『初夏』、5月の二十四節気と七十二候

◇「立夏(りっか)」の七十二候
初候:蛙始鳴(かわずはじめてなく)5月5日頃
蛙が鳴き始める頃。水田の中をスイスイ泳ぎ、活発に活動を始めます。
「かわず」は蛙の歌語・雅語。
次候:蚯蚓出(みみずいずる)5月10日頃
みみずが地上に出てくる頃。畑土をほぐしてくれるみみずは、動き始めるのが少し遅めです。
☆末候:竹笋生(たけのこしょうず)5月15日頃
たけのこが出てくる頃。たけのこは成長が早く、一晩でひと節伸びると言われています。


◇「小満(しょうまん)」の七十二候
☆初候:蚕起食桑(かいこおきてくわをはむ)5月21日頃
蚕が桑の葉を盛んに食べだす頃。蚕がつむいだ繭が美しい絹糸になります。
次候:紅花栄(べにばなさかう)5月26日頃
紅花の花が咲きほこる頃。紅花は染料や口紅になり、珍重されました。
末候:麦秋至(むぎのときいたる)5月31日頃
麦の穂が実り始める頃。「秋」は実りの季節を表し、穂を揺らす風は「麦の秋風」。


「竹笋生(たけのこしょうず)」と「蚕起食桑(かいこおきてくわをはむ)」に息づく和食の知恵

◇「竹笋生(たけのこしょうず)」5月15日頃~

読んで字のごとく、「筍」が生える時期と言う意味です。
しかし、5月も後半のこの時期だとすこし遅く感じられます。実は普段私達が「筍」と呼んでいるものには、何種類かの竹や笹の仲間が含まれていて種類によって収穫時期が少しずつズレがあるのです。良く目にするのは孟宗竹で、これは3月頃から市場に出回ります。また、真竹の様に6月頃まで収穫されるものもあるのです。


◇「蚕起食桑(かいこおきてくわをはむ)」5月21日頃~

二十四節気の『小満』の初候は「蚕起食桑(かいこおきてくわをはむ)」。
小満は「あらゆる生命が天地に満ちはじめる」という意味があると前述しましたが、「秋にまいた麦の穂が実って“少し満足”する」と言う意味もあるそうです。
古来より日本中で飼育されていた蚕。この蚕が体の周りに白い糸を吐き出して繭を作り、そこから採れる絹糸が生活を支える大きな収入源でした。そのため、蚕を「おかいこさま」と呼び、期待を込めて眺めていたそうです。


◇旬の食材
・野菜:筍、そらまめ、玉ねぎ、ルッコラ、らっきょう、さやいんげん など
・魚介:真鯵、岩魚、どじょう
・その他:メロン


◇和食の知恵
同じ食材や食べ物でも「季節」によって「呼び方」が変わるのが和食の特徴の1つ。
木の芽も葉山椒も同じものですが、木の芽は立夏位まで。夏には葉山椒と呼ばれます。
また、素材の持ち味を生かしつつ、不足しているものは他の旬の食材で補うのも和食の智恵の1つ。例えば『若竹煮』。旬のワカメは香りが豊かでも味が足りない。そこで筍の旨味を加えることで、双方を風味豊かに味わえるわけです。
1つの素材に欠けたものがあっても、別の素材との組み合わせで旨みや風味を引き出し、更に美味しく食べる。これは先人たちが見つけてくれた“食材の出会い”。筍のほろ苦さと木の芽の香りの“出会い”もこの時期に堪能したい味の1つですね。


夏が徐々に深まっていくこの時期に、味の出会いを楽しみつつも季節の食材をしっかり味わってスタミナをつけていくことも大切になってくるのがこの時期の食生活で忘れてはいけないことですね。