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福島県の郷土料理「いか人参」 ─福島県─
2015年09月07日
今回は、子供の頃から大好きだった郷土料理「いか人参」をご紹介します。
江戸時代後期から伝わる「いか人参」は初冬に出回る「長にんじん」を使用し正月には欠かせない冬場の保存食として作られていました。
私の故郷の福島県
私の故郷の福島県は東北地方の南部に位置し、面積は3番目に広い緑豊かな県です。南から北に連なる阿武隈高地と奥羽山脈によって太平洋側沿岸を「浜通り」、太平洋側内陸を「中通り」、日本海側の内陸を「会津」と3つの地方にわけられます。「浜通り」は太平洋に面し黒潮と親潮の影響で豊富な魚と豊かな海、1000年余の伝統がある相馬野馬追、映画「フラガール」の舞台になったスパリゾートハワイアンズがあります。
「中通り」は花見山の美しい花々やさくらんぼ、桃、梨、ぶどう、りんご畑が広がるフルーツライン、三春の滝桜などの美しい大自然と温泉が楽しめます。また「会津」は鶴ヶ城や大内宿などの歴史を肌で感じることができ、冬には良質な雪が降りスキーを満喫できます。同じ県内でも気候や文化が異なり豊かな自然が生み出す四季折々の海の幸、山の幸を味わえるのが特徴です。
子供の頃から大好きだった郷土料理、「いか人参」
正月には欠かせない冬場の保存食として作られていた「いか人参」、近年は人参が一年を通して手に入ることと冷蔵庫の普及によりいつでも手軽におつまみ、おかずとして食べられるようになりました。
材料は、するめいか、人参を細切りにし、しょうゆ、酒、みりん、砂糖などで味付けした人参の歯ごたえが楽しめるサラダのような漬物です。作り方や味は各家庭で異なり松前漬けのように昆布、あるいは唐辛子を入れて食べる家庭もあるそうです。
我が家でも「いか人参」はお正月が近づくと祖母がおせち料理の一品として作っていま
した。普段は人参が苦手な私もこの「いか人参」だけは特別で人参の味や香りを気にせず
に食べられました。
炊きたてのご飯にのせて食べると幸せを感じ、そんな私をいつも笑顔で見守っていた祖母を思い出します。
冬に不足しがちなたんぱく質、野菜を補う冬場の保存食
するめいかと人参の栄養は・・・
するめいかは、高たんぱく質、低脂肪、低カロリーでアミノ酸の1種であるタウリンが豊富です。するめいかの表面に吹き出る白い粉はタウリンです。タウリンは胆汁分泌を促
しコレステロールを排出する働きをしています。また肝機能の調整や疲労回復にも効果が
あります。
人参は緑黄色野菜の一つでカロテン、ビタミンB₁、B₂、ビタミンC、カルシウム、鉄分などが含まれています。特にオレンジ色の色素β-カロテン、α-カロテンは必要な時だけ体内でビタミンAに変化し、皮膚や目を守り、感染症を防ぎます。残りのカロテンは抗酸化作用があり動脈硬化や老化防止、ガンを予防するといわれています。
しかし人参にはビタミンCを壊す性質がありますが加熱や酢を使うことで破壊作用が消滅します。これらを総合的に考えると寒く長い冬に不足しがちなたんぱく質、野菜を補う冬場の保存食としての「いか人参」が理にかなったものだったことがわかります。ぜひみなさまもお試しください。
作り方~【材料】(2~3人分)
【材料】
・人参:1本(200g)
・するめいか(胴):1/2枚(15g)
・酒:少々
・漬け汁
砂糖 小さじ1
しょうゆ 大さじ2
酒 大さじ1
【作り方】
①するめは胴体をはさみで4㎝幅の2㎜程度に切り、酒(分量外)に20分くらいつける。
②人参は4㎝長さに切り千切りにする。鍋にお湯を沸かし沸騰したら人参を10秒くらいゆでざるにあける。
③漬け汁を鍋に入れて火をかけ沸騰したら止めて熱いうちにするめと人参を入れて混ぜる。
④密閉容器かポリ袋に入れて冷めたら冷蔵庫で保存する。
3時間~半日たてば食べられます。