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「健康な食事」マーク

2015年09月11日

厚生労働省が導入を検討していた「健康な食事」マーク。
マークを公募したり準備は進んでいましたが、
2015年の4月に導入時期が先送りとなっていて、その後も色々な議論がされる中
ついに「マークがついていない商品が不健康に見える」等の理由で
見直しとなりました。

この「健康な食事」マークは、どのような背景で
検討されていた施策なのか、今一度振り返ってみましょう。

日本人の長寿を支える「健康な食事」マークの狙い

まず選ぶ側のメリットとしては「分かりやすさ」が上げられています。
選ぶ側は、分かりやすいマーク(適切な情報)をもとに選ぶことで
手軽に「健康な食事」の食事パターンに合った料理を手に入れることができ
そして組み合わせて食べることができる、とされています。

次に提供する側のメリットとしては「料理の質の保証」が上げられています。
提供する側は、作り手の優れた技術により質を保証した料理を提供し、
そのことをマーク(適切な情報)で表現できる、とされています。

このマークが運用されれば、例えばコンビニエンスストアのお弁当やお惣菜、
レストランのメニューに国の基準を満たしたお墨付きをもらった商品が並び
売る側も買う側も、食事選びの基準(指標)がわかりやすく見える化される
構想でありました。

ですが、この制度の「健康な食事」マークの目的には生活習慣病予防など、
日本人の健康寿命の延伸などの目的も含まれているため、
基準も現実的には実装するのが難しい等
関係各所より批判が相次ぎ、見直しが検討されていました。

「健康な食事」マークの基準

【料理Ⅰ(主食)】
 精製度の低い米や麦等の穀類を利用した主食。
 なお炭水化物は40~70gであること。精製度の低い穀類は2割程度であること。
 ただし、精製度の低い穀類の割合が多い場合は、1日に1食程度の摂取にとどめる
 ことに留意する。

【料理Ⅱ(主菜)】
 魚介類・肉類・卵類・大豆・大豆製品を主材料として副菜(主菜)。
 なお、たんぱく質は10~17gであること。

【料理Ⅲ(副菜)】
 緑黄色野菜を含む2種類以上の野菜(いも類・きのこ類・海藻類も含む)を使用した
副食(副菜)。
なお、野菜は100~200gであること。


上記のような3つの食事パターンに食事区分が分けられています。
他、留意事項が細かく記載されていますが
エネルギーは1食当たりのエネルギー量は650kcal未満であること。
食塩の場合は、1食あたりの食塩相当量は3g未満であること。
など、外食産業、中食産業の現状と比較すると、
ずいぶんとハードルが高いように感じます。

まとめ

理想的な健康的な食事にマークを付けて見える化するのは
健康情報や知識をあまり持っていない人でも、一目瞭然で分かりやすく
判断基準のひとつになる、とは思います。
ですが、まだまだ理想的な食事に対して購買意欲が高い層はほんの一部であり
現場を見ている筆者個人のイメージとしては
もっと当たり前のことを、当たり前にできるような人を育てる
初歩的な活動から始める必要があるのではないかと感じます。

管理栄養士・栄養士の私たちが思う「当たり前」と
一般の方の「当たり前」にはかなりの差があるように思います。
この「当たり前」の認識の差が大きくなってしまうと、本当に手を差し伸べなくては
行けない人に情報や施策が届かない、という事態に繋がります。
ぜひ、専門職である私たちも、この「当たり前」の差を埋めることにたまには
意識を向けてみてください。