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食塩とナトリウム~その1~
2014年07月23日
≪食塩相当量とナトリウムとは≫
「塩味」は、料理のおいしさを左右します。この「塩」すなわち食塩は、ナトリウムと塩素からできています。
食塩相当量とは、下記の計算式で、食品に含まれているナトリウム量を食塩量に換算した値です。
【ナトリウム(mg)× 2.54 ÷ 1,000 =食塩相当量(g)】
食塩の働き
食塩は生命の維持に欠かせないナトリウムと塩素からできています。
ナトリウムは、体内の水分量をいつも適切な状態に調節したり、神経や筋肉を正常に動かすために働いたりする重要な役割をします。
一方、塩素は胃液などの成分になります。
生活習慣病の予防には減塩が大切
食塩はほぼすべての食べ物に含まれていますから、普通の生活では不足する心配はまずありません。
ただし、スポーツなどをして大量の汗をかいたり、嘔吐や下痢をしている場合には、たくさんのナトリウムが失われてしまうので適切に補給することが必要になります。
一般的に問題となるのは、食塩の過剰摂取の方です。食塩を取り過ぎる食生活では、高血圧や胃がんなどの様々な生活習慣病を招くおそれがあります。
国民健康・栄養調査結果によると、生きていくために必要な量は成人で1日1.5gほどであるのに対して、1日10g以上とっている人の割合は成人の5割以上も占めています。
急に無理な減塩をして食欲をおとしてしまうことは問題ですが、私たち日本人はもっとうす味の食生活に切り替えて、食塩を減らしていく必要があります。
成人では、まずは食事摂取基準の「目標量」である食塩相当量(男性10g未満、女性8g未満)を目指しましょう。
そして、WHO/国際高血圧学会ガイドラインなどで、高血圧の予防と治療のための指針として示されている1日6g以下に少しずつ近づけたいものです。
食塩の主成分ナトリウム
ナトリウムは、多くの食品に含まれているほか、食塩を多く含む醤油、味噌などの調味料、漬物類、加工食品に特に多く含まれます。
体内では血液、リンパ液、消化液などに含まれ、体液バランスの維持、神経の刺激感受性、筋肉の収縮作用などの役割を担っています。なお、体内のナトリウム量は、尿中に排泄されるナトリウム量によって調節されています。
また、運動による発汗によるナトリウム排泄も無視できません。
一般には、日本人の食生活ではナトリウムが不足することはなく、むしろ過剰摂取が問題となっています。
日本の食習慣を考慮して成人で1日10g未満を目標としていますが、実際には1日13g程度摂取しているのが現状です。
レトルト食品や出来合いのお惣菜類の摂取や外食が増えると食塩(ナトリウム)の摂取は多くなりがちです。ナトリウムの過剰摂取は高血圧や脳卒中の原因として問題視されていることから、日頃からうす味を心がけることが重要です。
通常、私たちはナトリウムを食塩というかたちで摂取しています。食塩は様々な食品に含まれているため、不足することはまずありません。むしろ、食塩の過剰摂取による高血圧、脳卒中、動脈硬化などが気になります。
1日の目標摂取量は10g以下。一般には7~8gが理想といわれていますが、高血圧を予防したいなら3~5gが適正です。
しかし、この数字を超えてしまうのはたやすいこと。たとえば、1食分の味噌汁(淡色辛味噌使用)には約900mgのナトリウムが含まれていますし、食塩ひとつまみで約600mg、濃い口醤油は小さじ1杯で約300mgです。
こうした調味料のほかに、カップめんや漬物、ポテトチップスなどのジャンクフードをよく食べる人はよほど注意しないとナトリウムを取りすぎてしまいます。
ただし、ナトリウムを制限しすぎると意識が朦朧としたり、血圧が下がったり、脱水症状を起こしたりします。生理作用に支障がでない必要量は380mg程度。食塩に換算すると1g未満ですから、これを下回らないようにしましょう。
栄養表示欄に書いてある「ナトリウム」とは
「ナトリウム」は食塩に含まれる成分の一部です。
食塩以外にも、肉や魚などの食品や添加物にも含まれています。「ナトリウム量=塩分量」ではありません。
1996年5月、食品の栄養表示基準制度が導入され、基本項目に「ナトリウム」の記載が義務づけられました。「ナトリウム」が高血圧症などの病気にかかわっているためです。加工食品の増加や健康への関心の高まりから、過剰摂取の予防の必要性も重視されています。
ナトリウムは成人の体内に約100g含みまれています。食塩(塩化ナトリウム)、重炭酸塩、リン酸塩として、約50%は細胞外液中に、40%は骨格に存在し、細胞内液中にはわずかに含まれるだけです。
ナトリウムは細胞外液の浸透圧維持、酸・塩基平衡、筋肉の収縮などに関与しています。また、水分を保持しながら細胞外液量や循環血液の量を維持しています。ナトリウムを過剰にとると、この液量が増大するためむくみを生じます。
ナトリウムはカリウムとともに体内の水分バランスや浸透圧を維持しています。ナトリウムはナトリウムイオンと塩素イオンが結合した食塩の形で摂取されることが多く、小腸で吸収された後、大部分が腎臓から尿中へ排泄されます。体内のナトリウム量は腎臓での再吸収量の調節によって維持されています。
ナトリウムは通常の食生活であれば欠乏することはありません。しかし、多量の発汗、激しい下痢の場合には欠乏し、疲労感、血液濃縮、食欲不振を起こします。日本人の食生活では、摂取不足よりもむしろ過剰摂取や高塩分食品の摂取による、高血圧やがんを主とする生活習慣病が問題となっています。
日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン(JSH2004)では、食塩摂取量として一日6g以下が推奨されています。しかし高齢者では、無理な減塩は食欲低下や脱水症状を起こすことがありますので注意が必要です。
平成14年国民栄養調査における食塩の摂取量は11.4gでした。このうち7.6g(67%)は調味料からの摂取で、しょうゆ(24%)、味噌(14%)、塩(13%)、その他の調味料(14%)でした。
調味料以外で食塩が多く含まれているものに、ハム、ウインナー、練り製品、即席めんなどの加工食品や野菜の漬け物などがあります。これらの食品を摂りすぎないように注意しましょう。
また、汁物にも食塩は多く含まれるので、具だくさんのみそ汁にしたり、ラーメンやうどんなどを食べるときは、汁を半分残すようにしたりしましょう。カリウムにはナトリウムを排泄する働きがあるので、食事の時にはカリウムを豊富に含む野菜や果物を一緒にとる工夫も大事です
日本人の食事摂取基準(2005年版)では、ナトリウムの排泄量から換算された18歳以上の男女共通一日推定平均必要量を、600mg(食塩相当量1.5g)と設定しています(食塩相当量はナトリウムに2.54を乗じて算出します。0.6g×2.54=1.5g)。
一方、生活習慣病の一次予防を目的として日本人が当面の目標とすべき摂取量は、日本の食文化、現状の摂取量を考慮して、18歳以上女性では一日8g未満、男性では10g未満とされています。
食品の栄養成分表示
食品の栄養性分表示が「食塩」から「ナトリウム」に変わりました。
食塩(塩化ナトリウム)は塩素とナトリウムが結合したものです。
元来、食塩は高血圧の原因と考えられてきましたが、それはナトリウムが原因であることがわかりました。食塩を使用していない「無塩食品」であっても、材料や調味料などにナトリウムが含まれていると、無塩食品であってもナトリウムが多いと高血圧の原因になります。
そういったことからも、「食塩」ではなく「ナトリウム」で表示することになりました。
ナトリウムは体の細胞外液、つまり体液に含まれています。ナトリウムは体の水分量の調節や筋肉・神経の機能を維持させるのに役立ち、また体の酸・アルカリのバランス(pH調節)に役立っています。そのためナトリウムの濃度の正常維持は体が正常に機能するために大変重要です。
よって、大量発汗、下痢、嘔吐によって体内のナトリウムが不足すると、血液が濃縮され内蔵に負担が掛かったり、のどが渇いたり、無気力になったり、意識障害になります。
また、ナトリウムを過剰摂取した場合は、腎臓の働きを鈍らせ水分調節が悪くなり、高血圧になったり、顔が浮腫んだりします。