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トランス脂肪酸の規制について

2015年10月06日

トランス脂肪酸に関しての記事をよく目にしますが
トランス脂肪酸を多く摂取するとLDLコレステロール(悪玉コレステロール)が
増加し動脈硬化を引き起こすリスクが高まることは有名な話です。

このようにリスクが明確になっているトランス脂肪酸ですが
アメリカでは使用規制や表示の義務化など、色々な対策がされていますが
日本ではアメリカほどトランス脂肪酸の摂取量が多くないせいか
まだ規制などはされていません。
日本人の摂取の現状と、各国の規制を確認してみましょう。

海外のトランス脂肪酸の規制について

【アメリカ】
≪使用に関する規制≫
部分水素添加油脂(PHOs)を、3年後までに原則使用禁止
≪表示に関する規制≫
2006年から義務表示

【デンマーク】
≪使用に関する規制≫
最終製品に含まれる油脂100gあたりの加工由来トランス脂肪酸が2gを
超えてはならない
≪表示に関する規制≫
なし

【カナダ】
≪使用に関する規制≫
低減達成目標を定めて事業者に低減化の取り組みを推奨
≪表示に関する規制≫
2005年から義務表示

【シンガポール】
≪使用に関する規制≫
容器包装入り食用油脂は2%を超えるトランス脂肪酸を含んではならない
≪表示に関する規制≫
2012年から容器包装入り食用油脂の包装に表示を義務化

【中国】
≪使用に関する規制≫
乳幼児用食品はPHOsの使用禁止
≪表示に関する規制≫
2013年から、PHOsが使用されている食品について義務表示

【イギリス・オーストラリア・ニュージーランド・日本】
≪使用に関する規制≫
摂取量調査から、規制の必要はないとして使用制限はせず、
むしろ「飽和脂肪酸の摂取量の多さが問題」としている
≪表示に関する規制≫
なし

※「栄養と料理」9月号 掲載資料より一部抜粋

≪PHOs≫
部分水素添加油脂(=PHOs)
液体の植物油に水素を添加して作る半固体または固体の油脂のことで
硬化油とも呼ばれている。マーガリンやショートニングがこれにあたり
トランス脂肪酸を多く含む。

アメリカでは…

冠動脈疾患が死因の1位を占めるアメリカでは、その原因の1つとして
トランス脂肪酸の摂取過多があげられています。
こういった背景よりアメリカでは使用を原則禁止する措置をとり
この措置により年間数千人の命が救われると説明しています。

トランス脂肪酸は、実は肉や乳製品などにもごく微量含まれていますが
これらに含まれるトランス脂肪酸は少量かつ代謝しやすい構造のため
規制対象にはなっていません。

日本では…

まずWHO(世界保健機関)ではトランス脂肪酸を総エネルギー摂取量の
1%未満とすることを目標としています。

ちなみにアメリカは総エネルギーに対して2.6%と高い割合を占めています。
日本では2012年に食品安全委員会がトランス脂肪酸のリスク評価を行い
総エネルギー量に対して0.31%と相当少ない割合だとされました。

こういった結果も踏まえて、
日本では通常の食生活では健康への影響は少ないと判断され、
トランス脂肪酸に関する使用規制は設けられていない
といことと現状なっています。


患者さまや対象者さまに聞かれることも多い「トランス脂肪酸」
専門職としてきちんとした裏付けのもと
わかりやすい説明ができるよう、何事にも常に高いアンテナをはり
情報収集をして行きましょう!