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京都の郷土料理「茄子と鰊(にしん)の炊いたん」 ─京都府─
2015年10月14日
今回ご紹介する京都は、寒暖差の大きい内陸盆地特有の気候であり、四季の移ろいがとても鮮やかな地域です。また、多くの歴史的な建造物が建ち並び、年間5000万人以上の観光客が訪れる、魅力あふれるところです。豊富な地下水は豆腐、湯葉の文化を育て、水はけがよく肥沃な土、寒暖の激しい気候は、京野菜を育てました。
『おばんざい』の精神
そんな京都の食文化で、外すことのできない『おばんざい』。
『おばんざい』とは、一般的で手近な食材を使い手間をかけずに調理した家庭料理の事をいいます。京都ではつつましいけれど巧みに食材を生かし季節を感じられる生活が営まれてきました。
『おばんざい』の精神は、
☆『ほんまもん』
☆『あんばい』
☆『であいもん』
☆『もてなし』
☆『しまつ』
の5つがあるそうです。どんなものも本物を選び、柔軟に良いあんばいで、掛け合わすものどうしの出会いを大切にし、食べてもらう人により楽しんでもらえるよう工夫し、物や時間を無駄にせず合理的に使うということだそうです。
昔の人の教えというのは、本当に見習うべきところばかりです。『おばんざい』には、定番的な物がたくさんありますが、その中でも私の一番のお気に入りの《茄子と鰊の炊いたん》をご紹介したいと思います。
子供の頃は理解できなかった「味」 でも、大人になると恋しくなる「味」
ところで、京都のお料理屋さんには、水菜とお揚げの炊いたん、白菜と豚肉の炊いたん、などメニュー名として○○の炊いたんと載っています。ご存知の方も多いと思いますが、私はこの炊いたんっていうのが京都らしい表現で大好きです。
話しが外れましたが、私が初めて茄子と鰊の炊いたんを食べたのは、確か小学校の事だったと思います。黒々しい見た目、恐る恐る食べてみるもその時の私には、茄子鰊の魅力などこれっぽっちも理解できませんでした。
それが大人になった今あの味が恋しく、母にあれ作って欲しいとお願いするようになっていました。この機会に母に教えてもらいながら茄子と鰊の炊いたんを作ってみました。鰊はソフト鰊と呼ばれる、しっとりとした半干し物を使用しました。
材料と作り方
【材料】(2人分)
・茄子:4本
・ソフト鰊:2本
・三温糖:大さじ3
・みりん:大さじ2
・醤油:大さじ3
・酒:大さじ4
・油:適量
【作り方】
1.身欠き鰊は、食べやすい大きさに切り、臭みを取る為、一度ゆでこぼしておく。
※身欠き鰊を使用する場合は米のとぎ汁に一晩漬けておき柔らかくした後、水でよく洗ってウロコを取り、番茶で煮ると、アクや臭みが取れるそうです。
2.鍋に1と酒を入れ、鰊がかぶるくらいの水を加え、火にかけ沸騰したら、きれいにアクをすくう。
3.調味料を加え、15分~ 20分煮る。
4.茄子は縦半分に切り、皮を目に斜めの切り目を入れ、2~3等分にして水に放ってアクを抜く。
5.4を油で炒めておく。
6.3に茄子を加えて、10分~ 15分ほど煮る。
※茄子は、油と相性がよく鰊の油をよく吸ってくれます。
7.トッピングに針生姜を飾る。
何気なく食卓に並んでいたものが・・・
茄子に豊富に含まれるアントシアニンは天然色素であるポリフェノールの一種で抗酸化作用とともに、目の疲労を改善する効果が期待できます。鰊にはDHAやEPA良質なたんぱく質はもちろんカルシウムやビタミンB2ビタミンEがたくさん含まれています。
一方、茄子には体を冷やす作用がありますが、鰊と一緒に食べることでからだを冷やしすぎるのを防いでくれます。茄子と鰊は『であいもん』。相性がよくお互いがお互しいを高めてくれます。
今回初めて、今まで何気なく食卓に並んでいたものが、郷土料理ということに気づきました。古き良きものを学び、大切にし、伝えていくことで、私たちの食文化がより豊かなものになっていくことが分かりました。
京都には、たくさんの古き良きものがあふれていてそれを次の世代に残して伝えてくための取り組みが多くあります。いつまでも魅力であふれる京都であるよう故郷の味を伝えていけたらと思います。