ショクライフTOP > 栄養士の知恵袋 > 先制医療のための栄養学

先制医療のための栄養学

2015年10月29日

予防医療をさらに進化させた「先制医療」というものが最近注目されつつあるようです。
「先制医療」とはどのような医療なのでしょうか。
そしてその「先制医療」に対応できる新しい考え方の栄養学とは
どんなものなのでしょうか。
現在の医療現場でのスタンダードである予防医療との違いを
確認しながら最新の栄養学について考えてみましょう。

予防医療と先制医療

現在、医療現場の大部分で行われている予防医療の内容は
下記の3つに分類することができます。
① 健康な時から疾病の発生を防ぐ一次予防
② 早期診断で異常のある人に投薬をする二次予防
③ 脳卒中や心筋梗塞など発生してから再発や悪化を防ぐ三次予防

先制医療も基本的には発症前から検査や指導で、
体の状態や生活習慣などを把握し、予防する点では予防医療と似ています。
ですが、予防医療と先制医療の大きな違いは

・遺伝子やバイオマーカーを測定して発症前から予測すること
・集団の発症率を抑えるのではなく個人ごとに予想される病気を防ぐ
 「個の視点」の医療

という点で大きく異なります。

どんな病気にかかりやすいかは個人によって違ってくるため
個々人の将来の健康状態を予測して先手を打つ。
これが先制医療の考え方です。

現在の予防医療ですと、個々人の状況は考慮せずに
平均的な目標量を基準に、集団を対象にして一般的な指導や注意喚起をするのが
主流ですが、先制医療では「個の視点」に注目した考え方となります。

多角的な視点からアプローチするシステム栄養学

現在の日本の栄養学は、
「食品成分表」「食事摂取基準」「国民・健康栄養調査」の
3本柱で成り立っています。
この考え方ですと、各栄養素の必要量や推奨量は大勢の人の平均値などを
基準に決められていて個人差は考慮されていません。
現状では「なにを(What)」「どれだけ(How much)」を示しているにしかすぎず
これから大切なのは
「だれが(who)」
「いつ(when)」
「なぜ(Why)」
が重要になると言われています。

どんな遺伝子を持っている個人が(遺伝子栄養学)←だれが(who)
どんな時刻・速度・順序で(時間栄養学)←いつ(when)
どのような動機、習慣で(精神栄養学)←なぜ(why)

食べているのか?を考慮しアプローチすることで
今までの集団の発症率を下げる考え方から、個人の発症率を下げる考え方が
注目されてきています。

人の体は色々なシステムが最適に働いて初めて健康増進が実現されるわけで
栄養素(材料)の性質や量だけではなく、遺伝子系、生物時計系、神経系などの
総合的な体のシステムも兼ね備えた考え方が必要であるとされています。
それが、最新の栄養学「システム栄養学」です。

これからの栄養士のありかたは?

これからは個人にフォーカスし、
その人だけのオーダーメイド医療が鍵となると言われています。

確かに個々人に合った指導ができれば、
今以上に予防効果は上がるのではないかと感じます。

…がしかし、「個」にフォーカスをした栄養指導や食事指導は
パーソナル感が高くなります。
パーソナル化すればするほど、指導する側の私たち栄養士も今
以上に幅広い知識、専門性が必要になってくるわけで、
国の指針に沿った万人に対応できるマニュアル通りの指導でよし、
とはいかなくなるだろうと考えます。

専門職としてWEBや雑誌などの情報に振り回されるのではなく
管理栄養士・栄養士だからこそ(しかできない)指導や
パフォーマンスが発揮できるよう
専門職としての能力アップは常に欠かさないようにしていきたいですね。