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高齢者に必要な3つの能力
2015年11月12日
昨今、「新型栄養失調」傾向にある高齢者が増えています。
毎日の食事を過不足なく食べることもそうですが、「食べる」だけではなく
高齢期は食事を取り巻く色々な行動も充実させてもらいたいものです。
例えば食材の買い出し、献立を考えてみる、
身近な人とおしゃべりしながら楽しく食事の時間を過ごすなど
こういった行動も高齢期を元気に過ごすためには、欠かせない能力を言われています。
3つの能力
基本的な「歩行」「排泄」「食事」「入浴」「着脱衣」など
人間の尊厳にかかわる最も基本的かつ日常生活の動作の能力を
いかに衰えさせないかは当たり前のことですが
これ以外に高齢期を楽しく過ごすための能力として言われているのが
下記の3つの能力です。
① 手段的自立の能力
② 知的能動性の能力
③ 社会的役割の能力
これらは、手段的自立<知的能動性<社会的役割の順番で
より高い能力として位置づけられています。
手段的自立
この能力は、必要に応じてその手段を選択して、生活を自己完結する能力を指します。
例えば、掃除や食事の準備などのいわゆる家事がこれにあたります。
器具や道具を操作して生活を営む行為、が手段的自立です。
他には金銭の管理も手段的自立の能力で、
金銭の管理を第三者にゆだねてしまう行為は、要介護高齢者への玄関口に立つことを
意味するようです。
知的能動性
この能力は、情報を自ら収集して表現できる能力です。
探索、創作、余暇活動などの知的な活動をするのが知的能動性です。
新聞を読む、読書をする、そしてその情報を元に会話をして、相手を楽しませるなどの
行為はこの能力にあたります。
この知的能動性の能力が高い高齢者は、人間としての魅力や気品がある人が多く
品のある高齢者はこの能力が高いとされています。
逆にこの能力が失われると、表情は乏しくなり、複雑な情緒のコントロールが
難しくなるので、他人の悪口が増えるなど、他者の「負」の面ばかりが
目につくようになると言われています。
社会的役割
人を思いやる、相談にのる、他の世代との積極的な交流などが、この能力にあたります。
仲間と会食の機会を持ったり、地域の活動に参加したりするのが
この社会的役割です。
これら3つの能力をできるだけ下げないことが、高齢期を楽しく過ごすためには
とても大切です。
手段的自立<知的能動性<社会的役割の順番でより高い能力と位置付けされていますが、
この3つのうち一番最初に衰えはじめるのはどれでしょうか。
一番高い能力とされる社会的役割から衰えると考えられていましたが
実は知的能動性から能力は衰えるとわかってきました。
テレビや新聞などを見なくなった、悪口やネガティブ発言が多い高齢者は
実はこの知的能動性が下がり始めているのかもしれません。
また知的能動性の能力が下がると、余暇の時間を進んで楽しむことができなくなるので
1日のうち何もしない時間が増える、という特徴もあります。
食事は3つの能力がフル回転
このように高齢者には3つの能力が特に大切であることがわかっていますが
実は食事をするときは、この3つの能力がフル回転しているのです。
食材の買い出し、お会計で手段的自立の能力。
レシピを考える、料理のアイディア、作り方を工夫するのは知的能動性の能力。
家族や身近な人と食事を楽しむ、会食に出かけるのは社会的役割の能力。
高齢期になっても毎日食事作りをすることで
自然とこの3つの能力は培われ、衰えを防止することができます。
食事をすることは実はとても高度な能力を使っている行為なのです。