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会食不能症って?

2016年03月10日

「孤食」という言葉は今となっては有名な言葉であり
日常的な光景となってしまいましたが、この言葉が使われはじめたのは
1980年代の前半頃です。
当時は、ひとりで朝ごはんを食べる子どもの姿は衝撃的でしたが
最近ではスマホをいじりながら子どもが無言で食事をする姿も、
当たり前とは言わないものの、ずいぶんと日常的な光景となってしまいました。

筆者も平日は外食が多いですが、ひとりでスマホをいじりながらの「孤食」は
もちろん、友達と一緒にも関わらず、それぞれがスマホをいじり無言で座っている
小学生・中学生・高校生を1度ならず何度も見かけたことがあります。

一緒に食事に来た意味はあるのだろうか?
この異様な風景、将来子供たちは大丈夫だろうか?
と何とも言えない違和感と将来へのただならぬ不安感を抱きました。

楽しく食事ができない「会食不能症」

家族の食事の在り方が時代とともに変化し、その弊害がさまざまな形でではじめて
いますが、「ごちそうさま」や「いただきます」などの挨拶ができない子どもや
お箸の使い方や姿勢の悪さなど、マナーの基本が欠如している子どもが
大変増えています。
そして、そんな食生活を長年続けることによって、大人になってからも
友達や家族と一緒に食事が食べられない「会食不能症」という症状の人が
増えてきていると言われています。

「会食不能症」はまだメジャーな言葉ではありませんが
「孤食」が当たり前という環境で育った子供たちは、
誰かと居てもそれぞれがスマホいじりで自分の世界に浸り、
結局「孤食」状態のまま食事をし、会話をしない、できない。
まさに筆者が目にした光景を全く同じ状況ですね。

残念ながら、過去当たり前だった食事のマナーや、会食を楽しむことができず
日常生活に支障をきたすまで症状が深刻な人も出てきているようです。

会食不能症の症状

とにかく人と一緒に食事ができないことが基本的な症状のようですが
会食不能症の場合、人によってその症状も千差万別のようです。
家では大丈夫でもレストランに行くと症状が出るタイプもいれば
友達など気心知れた人とであれば問題なくても、
先輩や目上の人、あまり親しくない人とは食事ができなくなるタイプなど様々です。

「会食会話恐怖症」とも呼ばれていて、
基本的には食べられない、というよりも食事中の人との会話にストレスを
感じ、上手に話すことができない場合が多いようです。

ひどい場合には、会話をすることがストレスとなり、吐き気や嘔吐、
めまいを引き起こし、誰かと一緒に食事をするという行為を避けはじめたりと
悪循環が生まれてしまいます。

原因としては不安神経症などの一種と言われているため
必ずしも幼少期の孤食がすべての原因とは断定できませんが
その環境も少なからず影響していると考えられています。

まとめ

食事の時間は家族とのコミュニケーションの時間でもあり
食材や栄養の知識、調理の工夫など、大人から子供へ自然と身についていたものです。
家族を囲んだ「食卓」は、特別な何かは必要でなく
その場の会話を楽しむこと自体が「食育」に繋がっているのですね。

また、高齢者の介護予防教室では、ボケ防止には「定期的な会食」が
勧められています。
これは、脳が一番活性化するのは食事をしながら誰かと話している時、
であるため積極的に脳トレならぬ「楽しい会食」を勧めているわけです。

「会食恐怖症」という今まででは考えられなかった症状が
散見されるようになってきましたが、食卓を囲む環境が変わった今
今後も何か弊害が出てくるのではないかと心配でたまりません。
今一度、「食卓を囲む」という場を見直し、忙しい中でも「場」を作り出せるよう
大人が工夫して作り出す必要性を感じます。