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庶民のソウルフードを町おこしに「富士宮やきそば」 ─静岡県富士宮市─
2016年06月14日
静岡県富士宮市は、日本を代表する富士山の西南麓に位置しています。富士山は古来から日本の象徴とされ、その麓である富士宮市には富士山信仰の聖地である富士山本宮浅間大社があり、多くの名将、武将も信仰を寄せ各地に伝説が残されています。また富士山は、豊富で良質な地下水や湧き水を生み出し、名爆“白糸の滝”や朝霧高原をはじめとする貴重な自然や生態系を生み出すなど、歴史的な建造物や自然遺産など見所が満載の日本を代表する観光地でもあります。
そんな富士宮市で、駄菓子として子供から大人まで古くから親しまれてきた庶民の味やきそばを「富士宮やきそば」と命名し、元気なまちづくりを目指すまちおこしを実行しようと、「富士宮やきそば学会」が2000年に発足させました。各地でご当地グルメによるまちおこしを行う団体との積極的な交流で、話題性を増す中、 2006年の第1回B−1グランプリにおいてゴールドランプリを獲得。続く第2回B−1グランプリにおいてもゴールドグランプリを獲得し、今では日本各地でその名を知られるようになりました。
〈富士宮やきそばの歴史は古く〉
終戦直後の富士宮市内では製糸産業が盛んで、多くの製糸工場が稼動していました。そこで働いていた女性の労働者や戦後満州から復員してきた元兵士の多くが、やきそばを好んで食べていたことでやきそばの需要が増え、定番化していきました。そんな中、地域的、時代的な背景から独特の特長を持つやきそばに進化していったのです。
〈その特徴とは〉
富士宮やきそばの「三大特長」は、1.認証団体の指定先の蒸し細麺、2.ラードを絞った後の「肉かす」が入っていること、3.魚の「削り粉(だし粉)」が入っていることです。中でも特徴的なのが「麺」の硬さにあります。一般的なやきそば麺の製造工程では蒸した後に一度茹でますが、富士宮やきそばの麺は茹でずに急速に冷やし、油で表面をコーティングします。そのため他の麺に比べ水分が少なく、独特のコシが生まれるのです。終戦後は冷蔵技術が乏しかったので、日持ちや行商に対応させるためこのような製法を確立していったそうです。
〈富士宮やきそばのレシピ〉
1.鉄板を充分熱し、ラードを溶かし広げます。
2.肉かすを炒め肉かすから出る油を鉄板になじませます。
3.キャベツを加え肉かすとよく炒めます。
4.キャベツと肉かすをフライパンの半分に寄せ、空いた所に麺をほぐして入れます。
5.麺にお湯をまわしかけます。(1玉に対しお湯40cc)
6.麺の上にキャベツと肉かすを乗せ、蓋をするようにして麺を蒸しあげます。
7.麺が蒸しあがったら空気を入れ込むようによく上下をかえしながら混ぜ焼き上げます。
8.全体にソースをかけからめます。
9.ねぎを入れる時はこのタイミングで入れると、香りが残り美味しいです。
10.最後にもう一度よく混ぜ、少量のソースを香り付けに入れます。
11.紅しょうがを添え、だし粉をタップリかけて完成です。
〈富士宮やきそばが健康的に食べられる訳〉
先に述べたように、麺の特徴として水分が少ないという点を活かして、野菜を多く入れても美味しく食べられるメリットがあります。普通の麺では野菜、特にキャベツを多く入れてしまうと、野菜の水分から麺がふやけてベチャベチャとした食感になってしまします。しかし、富士宮やきそばの麺では野菜を多く入れてもしっかりとしたコシが感じられるので、他のやきそばよりもより多くの野菜を一緒に食べる事ができるのです。
地元のスーパーでは麺、肉かすなど単独で購入する事が可能ですが、富士宮やきそばセットとして販売もされていますから、初めて作る場合はそのようなセットを利用することで本物の味を再現できるかと思います。また季節によってキャベツの水分量が違うため実際のお店ではお湯の量を調整し水っぽくなり過ぎないようにしているそうです。
小さい頃から当たり前のように食べてきた味が、こうして全国区で愛されるようになったのは何十年も鉄板でやきそばを作り続けてきた方達や、地元を愛する人達が活動を続けてきたおかげ。わたしたちはその道筋を絶えさせないよう、今後も地域の食を伝えていかなければいけないと切に感じるばかりです。