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日本人の食事摂取基準 2010年版公表

2014年07月23日

 日本人の食事摂取基準(2010年版)が平成21年5月に厚生労働省より発表されました。使用期間は、平成22年度から平成26年度の5年間です。

【日本人の食事摂取基準とは】
 健康な個人または集団を対象として国民の健康の維持・増進、生活習慣病の予防を目的にエネルギー及び各栄養素の摂取量の基準を示したもの
(日本人の食事摂取基準2010年度版より抜粋)

 2010年版では、数値の策定だけではなく保健所・保健センター等、生活習慣病予防のために実施される栄養指導や学校・事業所等の給食管理での活用を視野に入れた「活用の基礎理論」が記述されています。
 また、「乳児・小児」「妊娠・授乳婦」「高齢者」の各ライフステージにて特別の配慮が必要な事項について整理されています。

2005年版からの主な変更点

① 乳児の年齢区分の変更
〇エネルギー・たんぱく質において
2005年版2区分(0~5ヶ月・6~11ヶ月)

2010年版3区分(0~5ヶ月・6~8ヶ月、9~11ヶ月)

 生後2ヶ月程度では体重が2倍近くにもなり成長の著しい時期です。これに合わせより詳細な区分設定が必要と考えられるエネルギー・たんぱく質について2010年度版では3区分で表示されています。

〇基準体位
2005年版2区分(0~5ヶ月・6~11ヶ月)

2010年版3区分(0~2ヶ月・3~5ヶ月・6~8ヶ月、9~11ヶ月)

 幼児期では成長が著しくひとつの数値をもって代表値として捉えにくいことから基準体位1歳未満の月齢区分が4区分になりました。
*各栄養素等の値については2005年度版同様2区分で表示されています。

② 指標の見直し
2005年度版 「上限量」 → 2010年度版 「耐容上限量」
 耐容上限量を超えて摂取すると潜在的な健康障害のリスクが高まると考えられる表現となりました。

☆通常の食品を摂取している限り耐容上限量を超えて摂取することはほぼあり得ない。

☆耐容上限量の算定は理論的にも実験的にも極めて難しく多くは少数の発生事故事例を根拠としている。
「これを超えて摂取してはならない量」というより「できるだけ接近すること回避する量」と理解できる。

☆過剰摂取による健康障害に対する指標であり
健康の維持・増進、生活習慣病の一次予防を目的として設けられた指標ではないとされています。

③ 推定エネルギー必要量の値の変更
〇小児・若年女子で減少
→1~15歳未満50~200kcal減少
〇高齢者で増加
→70歳以上男女ともに増加
〇6~12歳未満の年齢階級の身体活動レベルⅠで
新たに推定エネルギー必要量が設定。

 エネルギー消費量の個人差が大きいことに鑑みより正確な推定エネルギー必要量を求めるために対象者の特性及びエビデンスの有無により身体活動レベルの改正がなされました。

④ ナトリウム(食塩相当量)の目標量の変更
現在の日本人の摂取状況をふまえて目標量が設定されました。
男性:2005年度版 10.0g未満→2010年度 9.0g未満
女性:         8.0g未満→       7.5g未満

目標量の算定背景
平成17年及び18年国民健康・栄養調査における成人(18歳以上)の
食塩摂取量(中央値)は男性で11.5g/日、女性で10.0g/日。

 性及び年齢階級別にみるともっとも食塩摂取量(中央値)が高いのは男性50~69歳で、12.2g/日を摂取。
 この値と高血圧の予防指針が示す6g/日との中間値は9.1g/日となり女性は成人の各年齢層において男性より摂取量が1~2g/日低いので男性よりも1.5g/日低い値が設定されています。

成人において今後5年間に達成したい目標量として男性9.0g/日未満、女性は7.5g/日未満が算定されました。

⑤ カルシウムの指標の変更
2005年版 「目安量」「目標量」

2010年度版 「推定平均必要量」「推奨量」

 カルシウムの体内蓄積量、尿中排泄量、吸収量など要因加算法を用いて骨量を維持するために必要な摂取量を推定するために有用な報告がかなり集積されてきたことから、この方法を採用して推定平均必要量ならびに推奨量を算定することが適当であると考えられました。

 また骨量の維持・増加によって生活習慣病のひとつである骨折の一次予防を期待できることからこれらの指標は目標量としての意味も併せ持つものと理解できます。

【推定エネルギー必要量】
当該年齢、性別、身長、体重及び健康な状態を損なわない身体活動量を有する人においてエネルギー出納(成人の場合、エネルギー摂取量‐エネルギー消費量)が0となる確立がもっとも高くなると推定される習慣的なエネルギー摂取量の1日あたりの平均値。

【推定平均必要量】
個人では不足の確立が50%であり集団の場合は不足が生じていると推定される対象者がほとんど存在しない摂取量。

【推奨量】
個人の場合は不足の確立がほとんどなく集団の場合は不足が生じていると推定される対象者がほとんど存在しない摂取量。

【目安量】
推定平均必要量が算定できない場合に設定される指標。(目安量以上を摂取してれば不足しているリスクは非常に低い)
*推奨量に近い性格:推奨量よりも理論的に高値を示すであろう指標。 

【耐容上限量】
この値を超えて摂取した場合、過剰摂取による健康障害が発生するリスクが0より大きいことを示す値。

【目標量】
生活習慣病の1次予防を目的として算定された指標。

<参考>日本人の食事摂取基準(第一出版株式会社)