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食用塩 「ミネラル豊富」?の実態

2014年07月23日

 ここ4、5年、コンビニなどに立ち寄ると『塩〇〇』と言う商品が目立ちちょっとした塩味?ブームがありました。

 食用塩の製造・販売については、平成14年(2002)塩専売廃止の経過措置も終了し完全に自由化され、健康や自然食などへの関心の高まりもあり、天然塩やミネラル豊富など様々な食用塩・塩商品が販売されるようになりました。

 昨年には、あいまいだった表示に新しいルールが定められることになるなど、食用塩の製造・販売が変わってきています。

食用塩の歴史  

 食用塩の製造・販売は、明治38年(1905)専売制が始まり廃止される平成9年(1997)まで約90年、規制されていました。
 なぜ専売制が執られていたのか、その経緯は、日露戦争の資金調達と国内塩業の基盤整備のためと言われています。
 さらに戦後の高度成長期、海岸沿いの塩田の立地は工業用地として最適な場所だったため昭和46年(1971)には、塩業近代化臨時措置法が成立しすべての塩田が廃止されました。
 そして、食用塩は塩田での製塩に代わり価格の安価なイオン交換式製塩法(イオン交換樹脂皮膜電気透析法)により製造されるようになりました。

 しかし、イオン交換塩は、自然塩に比べて塩化ナトリウムが増えマグネシウム、カルシウムなどほとんどの成分が少ないと言われています。そのような見解もあり、自然塩の復活運動が始まり専売制で販売される食用塩以外の自然塩を販売する動きがでてきたことにより平成9年に食用塩の専売制は廃止され、塩事業法が施行されました。
 専売制時代は7社しかなかった塩製造社が現在では全国で700社以上にも増えました。商品数も1500品以上に増え、現在、生産の多くを占めるのが輸入原塩を使用して、にがりや海水を加えた再製自然塩です。
 また、健康や自然食、地産池消の関心の高まりからか日本の海水から自然な製塩法で生産され無添加でミネラルバランスに優れた自然塩をつくる生産者も増えています。

食用塩の表示 「ミネラル豊富」?あいまいな表現の見直し

 自然塩などのミネラルバランスに優れたものが販売されるようになり製造地や製造方法、ミネラル、天然、自然などを謳い文句にした食用塩の消費量は増加傾向にあります。
 しかし、健康を謳う上で、統一の表示ルールがないことが消費者に誤解を与え兼ねないとして昨年、公正で正直な消費者への情報公開について塩関係の業者が話合い、表示ルールを作りました。

表示ルールの内容

 食用塩の容器又は包装に表示する必要表示事項、特定事項の表示基準、特定用語の使用基準、不当表示事項、公正マーク(会員証紙)、公正取引協議会の事業内容等を規定する。

引用:「食用塩の表示に関する公正競争規約」の概要(公正取引委員会)
(1)必要表示事項
名称、原材料名、内容量、原産国名、事業者名等を一括して表示すること、製造
方法の特性を表示すること等を義務付ける。
(2)特定事項の表示基準
「〇〇の塩」(〇〇は地域名)等の特定の地域名又は地域的特徴を意味する事項を表示する場合、「にがり」、「海洋深層水」を使用している旨を表示する場合
等の基準を定める。
(3)特定用語の使用基準
「天日塩」「焼き塩」「天然」「自然」「特級」「特選」等の用語を表示す
る場合の基準を定める。
(4)不当表示事項
ミネラルの含有量が豊富であることを意味する表示をすること、健康、美容等に効能・効果があるかのような表示をすること等を禁止する。
(5)公正マーク(会員証紙)
会員は、規約に従い適正な表示をしている食用塩の容器、包装等に「公正マーク」を表示できることとする。

上記の規約は、平成20年4月21日から施行され、平成22年4月までに表示は完全に切り替わる予定です。

最後に

 塩の主成分の塩化ナトリウムはミネラルです。
 塩化ナトリウムの過剰摂取は高血圧の要因の1つです。「ミネラルを含む」と表現した場合主成分が塩化ナトリウムのため当然ミネラルは多いことになります。
 健康によい印象の「ミネラル」という言葉を使うと誤解を受けやすくなります。現在、食用塩だけでなく様々な食品に表示の取り決めがなされていますが、
わかりやすく正しい表示をすることは健康面への影響や食の安全を考える上でとても重要なことです。
<参考>「食用塩公正取引協議会」及び「公正取引委員会」HP