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餅 料 理 −岩手県一関市−

2014年08月18日

「名物にうまいものなし」という、ことわざがあります。「名物といわれているものは、実際に食べてみるとたいしておいしいものがない」ということですが果たして本当でしょうか。

故郷の味とは?

 私は、岩手県の一関市で生まれ育ちました。代表的な郷土料理は餅料理です。一関市を含め、岩手県の県南地域は「餅文化圏」とされ、餅料理では日本一といわれます。お正月や節句などの年中行事はもちろん、おもてなし料理として餅をつく習慣があります。
 おつゆ(雑煮)、あんこ、しょうが、ごま、納豆、おろし、くるみ、ずんだ(枝豆)など種類が豊富で、素朴さの中に温かいまごころを感じさせる料理です。私の1番のおススメは、くるみ餅! 辺り鉢で擂ったくるみに焦がした味噌、砂糖を加え、緑茶(ほうじ茶)でのばしたタレを餅にからめていただきま
す。醤油で味付けすることもありますが味噌の香ばしさは味に深みが出ます。
 おつゆ餅は、大根、人参、ごぼう、油揚げ、凍み豆腐、きのこ、せりなど具沢山。餅料理と一緒に食べるのは、なます(大根卸しに甘酢で味付けしたもの)。初めて食べる人は、普通の大根卸しだと思い込み、思わずむせてしまう一品です。
 なますには、秋に採れた菊の花の酢漬け、キノコの塩漬けを合わせることもあります。
おつゆ餅の具やなますは、消化を助ける昔からの工夫でしょう。

果たして同じもの?

お正月には、餅料理と並ぶ漬物も楽しみのひとつです。たくわん、白菜漬け、うりの味噌漬け、きゅうりの古漬けと粕漬け。それぞれ家々の味わいがあります。
 昔は、冷たい樽に手を入れるのが苦手でした。今ではお宝に手を入れるような気持ちで取り出します。
 一度、宅配便で樽ごと送ってもらいましたが、強烈な匂いで配達の方に申し訳なかった記憶があります。ところが届いた漬物があきらかに実家で食べた味とは違っていたのです。寒いところに保存しておくべき樽が移動して味が変わってしまった? 果たして気温のせいだけでしょうか。
 旅先のお土産でも同じような感覚を味わったことがあります。美味しかったはずなのに場所が変わったことで違って感じてしまうのです。その土地の空気、匂い、季節すべてが故郷の味、本来の味であることに気づかされました。

「名物にうまいものあり」

「名物」とは、昔からの食文化に触れ、旬の味を季節とともにいただくことではないでしょうか。それは、その土地ではごく自然で当たり前の味。当たり前の味をいただける贅沢。食を通してその土地とのつながりを感じることができるはずです。
 郷土料理からは、素材の活かし方、保存方法など学ぶべきことがたくさんあります。健康食の知恵に溢れています。故郷の美味しくて身体に良い食事に感謝します。

一口栄養メモ

くるみ(胡桃)の脂質には、リノール酸やリノレン酸などの良質な不飽和脂肪酸が多く含まれています。
 血中のコレステロールを下げ、心臓病や動脈硬化、がんなどの生活習慣病を予防する働きがあります。
 東洋医学では、体を温め、冷え性や咳止め、不眠症、便秘などの薬効があるといわれています。