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食べたいな、食べてほしいな、郷土料理
2014年08月22日
「郷土料理」、「ふるさとの味」、そこには暖かい響き、家族、親戚、町内会、幼なじみ……。素直なじぶんに戻れる食べ物のような気がします。
私は、沖縄出身ではないのですが、郷土料理と聞いて最初に浮かんだのが“イカスミ汁”でした。
イカスミ汁を初めて食べた時
初めていただいたのは数十年前、漁師の方々が漁を終えた後、集まる食堂でした。
イカスミ汁を注文すると大きな丼に、真黒なお汁。同じ大きな丼に一杯のご飯。お盆の上にはそれだけ。食欲をそそる色気もない、大きな黒い丸と白い丸だけです。こちらの目も丸くなりました。
口が黒くなる……と少し躊躇しながら、そっとすすりました。
「甘ーい!これが、イカスミの味なの?!おいしい!! あーあったかい!」
イカを食べると、ほどよい歯ごたえ。柔らかくて優しい感じ。ご飯を食べるのも忘れて、イカスミ汁を完食。ご飯だけを残す恥ずかしい食べ方……。このご飯、図々しくもおむすびにしていただきました。
このように、改めて思い返しますと、お腹を満たし、その味に満足しただけではなく、何かの温もりをいただいたことを、今になって気が付きます。
記憶に残っていた温もりと美味しさが生んだ、私にとっての郷土料理。
古来よりなじみ深い食材として
さて、この“イカ”ですが、郷土料理ランキングでは、いくつかの地方にもランキングされています。いか飯、いかソーメン、いかにんじん、いかの鉄砲焼きなど、皆様も一度は口にされたことがあるかと思います。それだけ日本人には、なじみ深い食材といえます。
またイカは、健康にも良い食材です。タウリンという成分が多く、人が健康な状態に戻ろうとするホメオスタシスの働きを活発にします。栄養ドリンクでも目にする成分です。
イカスミも健康に良い食材です。ムコ多糖ペプチド複合体という成分が多く、免疫の働きを活発にします。イカスミのヌルヌルが、この成分です。
イカとイカスミには、人に本来備わった“健康に生きようとする力を助ける働き”が、あるといえますね。
なかでもイカスミは、中国の古い医学書でも紹介され“動悸や心臓の痛みを和らげる”“子宮出血を和らげる”といわれていたようです。
実際、沖縄においても、イカスミ汁は“出産直後の女性が最初に食す料理”また“下げ薬(サゲグスイ)”といって“頭痛・のぼせを鎮める料理”ともいわれています。
風邪のときにはカチュー湯を
沖縄には、このように医食同源が生きづいており、滋養強壮には“チムシンジ(肝じ煎)”と呼ばれる豚肉のレバーで作る汁物をいただき、風邪には“カュー湯”と呼ばれるかつお節の汁物をいただきます。
この中で、手軽につくれるカチュー湯を紹介します。本土では風邪をひいた時、卵酒をいただき温まります。それに代わるものです。材料は、汁椀一杯のかつお節5〜10グラム位です。お味噌小さじ1〜1.5、ねぎを少々、お好みでおろしにんにく少々です。
材料を大きめの汁椀に入れます。熱湯200ccを注いで、ふたをします。1〜2分蒸らして、ふたを取ります。味噌とにんにくを溶きのばすようにかき混ぜて、でき上がりです。
ホッとする香りに体の緊張もほぐれ、温まります。私はお気に入りの、大きめのマグカップで作ります。冷めにくく、ゆっくり、ほっこり、味わえます。かつお節は、厚削りか大きく削った花かつおを使います。香りが高く、味が濃く、歯ごたえがあり、お薦めです。お味噌は、なじみのお味噌で十分です。
白みそ、赤みそ、合わせ味噌……自分の土地のお味噌でいただけば、郷土料理のコラボレーションとなりますね。是非お試しください。
最後に
沖縄の方々が大切になさっている言葉を紹介します。「ヌチグスイ」です。“食は、命のくすり”の意味です。「ヌチ」は命の意味、「グスイ」は薬の意味です。また、ごちそうのことを「クスイムン」といいます。”薬になる体にいいご飯”の意味もあります。古くから医食同源の精神が日常に取り込まれている沖縄ならではの言葉です。“食べることは、健康な体をつくること”、一食一食を大切にする気持ち、自然から生きる力をいただく沖縄の食文化を見習いたいですね。