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茶粥と金山寺みそ─和歌山県─
年月日
私の出身地、和歌山県の田辺市は、紀伊半島の南西部にあり観光地白浜の隣の街です。和歌山は平野部が少ないので、海の幸、山の幸、川の幸が豊富にあります。
海の幸は日高地方のクエ、タチウオ、紀南地方のシラス、アジ、イサギ、グレ、すさみ周辺のケンケン鰹、串本周辺のサンマ、キビナゴ、勝浦のマグロとたくさんあります。
白浜に近畿大学の水産試験場があり、タイとイシガキダイをかけて「キンダイ」という魚を養殖しています。最近ではクエの養殖に成功し、安価で買うことができます。また、マグロの養殖の研究も進んでいます。
山の幸で一番有名なのが、ウメとミカンです。私は、毎年6月になるとウメ酒を作っています。
他にも、山菜のワラビ、ゼンマイ、フキやマツタケ、クリ、猪肉や鹿肉などもあります。
川の幸では、アユやアマゴ、ヤマメ、川エビ、ウナギなどがあります。アユは焼いてもおいしいですが、紀南地方では、アユを干して干しアユでそうめんの出汁をとります。ぶっかけそうめんなので出汁までおいしくいただけます。
茶粥「おかいさん」
本当にたくさん紹介したいものがありますが、今回は、私が幼い頃から食べている茶粥と金山寺みそを紹介したいと思います。
茶粥は、文字通りお茶で作った粥のことで、基本は、ほうじ茶かそば茶を大きな鍋の中で煮出し、洗った米を入れて炊くものです。私の母はウーロン茶で作ったりしています。また老人ホームでは、感染予防のために紅茶で茶粥を作っている所もあります。
茶粥の中にササゲやサツマイモが入っていることもあります。また、大阪のおばちゃんが飴のことを「アメちゃん」というように茶粥のことを「おかいさん」といって当たり前のように毎朝、人によっては三食ともに「おかいさん」を食べています。何でも、石高の少ない地方に茶粥が広まったといわれています。
加賀は100万石、和歌山市の紀州藩は55万石、田辺は3万5千石ですからこの話もうなずけます。
私が京都で下宿していた学生のときに友人が風邪をひいたので、「おかいさん」を作ってあげました。友人は「何?この色。お茶゙でお粥を炊くの?」と、とても驚きました。 私は、そのことがあるまで日本全国、粥といえば茶粥=「おかいさん」を食べているのだと思っていたので恥ずかしいやら、おかしいやらで友人に説明し笑ったことも思い出の一つです。
なめみそ【金山寺みそ】
そして「おかいさん」の友は、金山寺みそです。これは、みそ汁やみそ煮に使うみそではなく、そのまま食べる「なめみそ」の一種です。鎌倉時代に中国の金山寺 (径山寺)で修行した僧侶により和歌山の湯浅町に伝えられ、後に醤油発祥の元にもなったといわれています。
作り方は、大豆を煎って皮をとばして水に1日つけておく。
米も洗ってつけておき、米と大豆と麦を蒸して人肌程度に冷めたら、“もやし”という麹の種菌を混ぜ発酵させます。
刻んで塩もみしておいたウリ、ナス、ショウガ、オオバなど(人によって入れる野菜が違う)を混ぜ調味料を入れ寝かせます。夏は1ヵ月、冬は3ヵ月で出来上がりです。
今では市販されていますが、私の家には、いつも近所のおばさんが作った金山寺みそがありました。人によって味付け、入れる具材が違うので、誰の作った物かを当てるのが楽しみでした。
発酵食品の特性
昨年は、塩麹が流行して、塩麹レシピなどがたくさんありましたが、ご存知の通り発酵食品は、微生物が発酵する過程でビタミンや必須アミノ酸、クエン酸、抗生物質といった人間に必要不可欠な物質を生成してくれます。また発酵することで抗酸化作用が強くなり食品に含まれるビタミン、カロチン、カテキンなど低分子物質抗酸化物質が生では非活性状態であったのが発酵することにより結合がフリーになり、とても強い抗酸化作用を持つようになるといわれています。 また、発酵食品が腐敗しにくく長持ちする理由は、発酵菌が強く腐敗菌を始めとする他の菌を抑えつけてしまうからです。だから多くの発酵食品は、長期間保存できるという特徴を持っています。金山寺みそも1年に2回作れば、1年中食べることができて、ご近所に配れます。
私にとって、「おかいさん」と金山寺みそは、ホッとできる故郷の味です。和歌山のドライブインや道の駅などで、「おかいさん」用のお茶のパックや金山寺みそを売っていますので、ぜひ一度食べてみていただけたらと思います。