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暑い夏を乗り切る郷土料理「冷や汁」 ─宮崎県─

2014年08月27日

 海、山、平野と豊かな自然に囲まれて、年間を通して過ごしやすい、温暖な気候の宮崎県。
 マリンスポーツやゴルフを目的に訪れる人も多く、プロ野球などスポーツ選手のキャンプ地としても知られています。
 空港に降り立つと、青い空、暖かい空気風に揺れるフェニックス並木、満開のブーゲンビリア・・・と南国情緒たっぷりに迎えてくれます。
 空港から自宅に向かう海岸線には、いくつもの絶景スポットがあり、何の障害物もなくずっーと遠くまで見渡せる水平線を車窓から眺めていると、「あー、帰ってきたなぁ~」と、私の東京スイッチが次第にOFFになっていきます。

夏のファストフード

 宮崎県の郷土料理といわれて、真っ先に思い出されるのが「冷や汁」です。
 熱い麦飯に冷たい汁をかけて、ザザッと掻き込むように食べます。「熱い」と「冷たい」の温度差のある味わいが良く、キュウリと青ジソが爽やかさを添えます。
 宮崎の夏は、さんさんと太陽が降り注ぎ、降水量が多く、高温多湿です。食欲が落ちて、スタミナ不足になりがちですが、冷や汁は、ササッと食べられて、満足感があって、私にとって冷や汁は、素早く栄養補給できるファストフードでした。
 栄養的には、炭水化物、たんぱく質、脂質の三大栄養素が摂れて、カルシウムが豊富。
 冷や汁に合わせる麦飯には、ビタミンB1、食物繊維が含まれています。
 作り方は、地方によって微妙に違っています。いりこを使うところ、アジを使うところ。ゴマに加えてピーナッツも入るところ。豆腐が入ったり、錦糸卵が入ったり・・・など。

郷土料理を現代に合った調理法で

 我が家のレシピは、アジで作ります。
 すり鉢でゴマをすり、焼いたアジをほぐして加え、さらにすります。最後に九州ならではの麦味噌を加え、麦の粒を潰すように、すり混ぜます。ひたすら丁寧にすることの繰り返しです。
 これをすり鉢の内側に薄くのばしながら貼り付け、ガスコンロの上にひっくり返して、いい焼き色がつくまで直火で焼きます。
 焼くと魚臭さがとれて、香ばしさが加わります。あとはだしでのばして、冷蔵庫で冷やしてから、キュウリや青ジソを加えて完成です。木綿豆腐や錦糸卵は、入ったり、入らなかったりしていました。
 こんな手間暇かかる冷や汁なので、作るときは多めに作って、特に夏場は、保存容器に移して冷蔵庫に常備されていて、食欲がないときでも、これなら喜んで食べていました。
 さて、冷や汁作りには、大きなすり鉢が必要ですが、現代では、すり鉢を持っていないご家庭も少なくありません。
 仕事がら、作り方をご紹介する機会がありますが、今の時代にあった調理方法にしています。フードプロセッサーとオーブントースターを使った現代版のレシピです。

冷や汁のレシピ

<材料> 4~5人分
アジ   中2尾
塩    少々
ゴマ   大さじ4
麦味噌  100g
だし   5カップ
木綿豆腐 1/2丁
キュウリ 1/2本
青ジソ  8枚

<作り方>
1.アジははらわたをとって、塩をふって焼く。頭や骨を取り除き、身をほぐす。
2.ゴマを炒いって、フードプロセッサーですりゴマにし、1と味噌を加えて、すり混ぜる。
3.2をアルミ箔の上に平らにのばし、オーブントースターで焼き色がつくまで焼く。
4.ボウルに3を入れて、だしを少しずつ加切りした木綿豆腐をつぶしたもの、キュウリの小口切り、青ジソの細切りを加え、麦飯にかける。

宮崎の魅力

 その他の宮崎の魅力は、神話の里・高千穂やスピリチュアルなスポットが点在し、食では、ご当地グルメとしてすっかり有名になったチキン南蛮、コンビニの定番になっているレタス巻きも、実は宮崎生まれです。
 地鶏、牛肉、シビ(マグロ)、カツオなどの魚。あまり知られていませんが、ウナギの養殖も盛んで、生産量は全国第3位。味の評価も高く、地元では新鮮なウナギが手ごろな値段で味わえます。
 そんな宮崎グルメには、サツマイモが原料の焼酎がよく合います。ヒュウガ
ナツ、マンゴーなどの南国フルーツもおすすめです。
 宮崎の自然と気候から生まれて、時代とともに進化しながら受け継がれてきた「冷や汁」。暑い夏を乗り切るヒントがあると思います。