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小麦粉とかかあ天下─群馬県─
2014年08月29日
私が住んでいる群馬県。関東地方にありますが、草津や伊香保といった温泉地、ゆるキャラの「ぐんまちゃん」は知っているものの、どんな場所なのか知らない方も多いのでは?
今回皆様に少しでも群馬県のことを知っていただけたらと思います。
冬の麦栽培が盛ん
温泉以外で有名なものは農産物。
「嬬恋村の高原キャベツ」「こんにゃく」「下仁田ネギ」などがありますが、今回ご紹介するのは小麦粉です。
冬は日照時間が長く、まわりを上毛三山に囲まれて北西からはからっ風が吹きます。そして水はけの良い土壌から、昔から水田の裏作として冬の麦栽培が盛んでした。(現在生産量は全国4位)
麦栽培をしていたこともあり、粉食文化が発達していきました。
蒸した饅頭に竹串を刺し甘い味噌ダレを塗って焼いた「焼き饅頭」、小麦粉に水を入れて焼き、砂糖醤油につけて食べる「じり焼き」といったものも生まれました。
そして、日本三大うどんのひとつともいわれている「水沢うどん」も群馬県にあります。
働く「かかあ天下」料理
寒い冬、家庭料理としてよく食べられるのが「煮ぼうと(県南部)」です。県内でも地域によって呼び方が異なり、「おっきりこみ」と呼ばれたりもします。おっきりこみの由来は、「麺を切っては入れ、切っては入れて食べる」ことからです。
山梨県のほうとうとの違いは、味噌ではなく醤油味である(一部味噌のところがあります)こと、そして南瓜は入っていません。
普通のうどんとの違いは、麺の太さ。煮ぼうとは「ひもかわ」と呼ばれる幅広麺を使っています。
そして、麺を打つときに塩を加えません。普通のうどんは塩を入れて打ちます
が、茹で上げるときに塩はゆで水に移ります。しかし煮ぼうとは麺を茹で上げないため、塩を入れてしまうと、つゆがしょっぱくなってしまいます。
煮ぼうとの起源は、12世紀に上野の国新田荘(現在の群馬県太田市)を開発した新田義重が、宮中で習い覚え、群馬に戻ってからも好んで食べて伝わったといわれています。
そして更に広めたのは女性たち。昔は富岡製糸場に代表されるように、養蚕業が盛んでした。養蚕業や農作業など働く女性が多く家計を支えていたことから群馬県は「かかあ天下」だと呼ばれています。
そんな忙しい女性が栄養バランスに優れ、手早く大量におなかいっぱい食べられる料理を作り始めたのが「煮ぼうと」の普及に繋がりました。
煮ぼうとは主食としてではなく、主に汁物のひとつとして食べられています。お米が貴重だった時代、小麦粉からもエネルギーを摂るようにしていたようです。
煮ぼうとのレシピ
【材料】(4人分)
だし汁・・・800ml
ひもかわ・・(幅広の生麺1P:220g)
生椎茸・・・2枚(スライス)
人参 ・・・20g(いちょう切り)
長ネギ・・・1/3本(小口切り)
ナス ・・・1個(縦半分に切り、斜め切り)
油揚げ・・・1枚(縦半分にし短冊切り)
竹輪 ・・・1/2本
醤油 ・・・大さじ4
酒 ・・・小さじ1
砂糖 ・・・小さじ1
【作り方】
①だし汁の入った鍋に、適当な大きさに切った野菜を入れて煮る。
②少し煮立ったら、湯通しした油揚げを切り、竹輪を加える。
③醤油・酒・砂糖で味付けする。
④麺を加えてよく煮込む。
*野菜は決まりはなく、その季節に家にあるものを使います。
煮ぼうとの栄養
ひもかわを作る小麦粉の主な栄養素といえば、糖質。今は糖質=太ると思われがちですが、一番早くエネルギー源として使え、脳の唯一の栄養源でもあります。
麺に含まれるでんぷんは、ゆっくりと体内で分解されてブドウ糖になるため、砂糖より血糖値の上昇が緩やかです。そして持続性があるのが特徴です。
煮ぼうとには、多くの野菜も入れます。加熱すると生野菜よりもかさが減り、たくさん食べられます。また水溶性のビタミンも汁の中に溶け出すので、それをそのまま食べることでもれなく栄養を摂ることができます。
糖質の量が気になる場合は、おかずに豚肉やうなぎなどビタミンB1が多く含まれているものを一緒に摂るのが効果的です。ビタミンB1は糖質を燃焼するときの手助けをしてくれるので、頭の片隅に覚えておくのをオススメします。