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出雲市の郷土料理 ─島根県─
2014年09月26日
島根県と聞いて思い浮かべられるのは何でしょうか。
パワースポットとして取り上げられるようになった出雲大社、世界遺産登録されて広く知られることになった石見銀山。
訪れたことはなくても、写真を見たり話に聞いたりされたことはあるかもしれません。
これまで、あまり取り上げられる機会のなかった島根が、近年になってテレビなどで放送されたおかげで、私が暮らしていた頃の島根とは随分と雰囲気が変わり、地元へ戻るたびに、溢れる活気に驚いています。
島根県は、中国山地を背に、東西に約20kmと細長く、日本海に面しています。
さらに、汽水湖としては日本の中でも2番目と3番目の面積を持つ中海と宍道湖の存在、日本海に浮かぶ隠岐地方の存在も自然豊かな島根の郷土料理の多彩さに大きく影響しています。
幼少期、飽き飽きしたいた海産物。。。
私自身は、父の仕事の都合で幼い頃から島根県内の東部、西部、山側、海側と、住んできましたが、両親ともに、海側出身だったためか、食卓に上る料理の多くは海のもので、おやつにも一斗缶に入った板わかめを出され、当時は海産物に飽き飽きしたものでした。
今では、これらがとても懐かしく思い出されるものとなっています。
多くの郷土料理に親しんできたように思いますが、中でも、海水浴へ行ったときに、海から上がってくると飯ごうで炊かれていた「べべ飯」は、真っ先に浮かぶ懐かしい郷土の味です。
どうやら数年前に、この「べべ飯」がメディアに取り上げられ、ちょっとした話題になったそうですので、ご存知の方は意外に多いかもしれません。
べべ飯とは
「べべ」というのは、カサガイの仲間のことです。島根ではヨメガカサガイ、ベッコウカサガイなどのカサガイの仲間を全て、「べべ」
とか「ボベ」などと呼びます。実は日本各地の磯で割と目にすることのできる貝ですが、島根の漁村では昔から食用としてきました。
最近は、その数も少なくなってしまったそうですが、それでも、べべ貝採りの名人いわく、夕方頃に懐中電灯を片手に磯へ行くと大きいべべ貝が、たくさん採れるのだとか。
このべべ貝を、食べる分だけ、その都度採って浜で塩茹でしてつまんで食べたり、べべ飯を炊いて食べたりしたものでした。
以前はスーパーなどでは見かけなかったのですが、最近では島根のスーパーには置いてあるそうです。
残念なことに関東では市場を巡っても、見かけることのできない貝なのですが、島根の海岸沿いに行かれたら、運が良ければ浜料理などを出してくれるお店で口にすることができるかもしれません。
突き出しなどとして、べべ貝やニナ貝(クボガイ、シッタカバテイラなどの巻貝の島根での呼び名)の塩茹でを出してくれることもあります。
べべ飯レシピ
【材料】
お米 ・・・2合
べべ貝・・・200g(殻付きの重量)
水 ・・・250cc(べべ貝を茹でるための水)
塩小さじ・・1/2(なくても構わない)
お酒 ・・・少々(ほんの気持ちだけ)
薄口醤油・・小さじ1と1/2
【作り方】
1.お米は洗って水気を切っておきます。
2.べべ貝はよく洗います。
3.水250ccを沸騰させたところへ、洗ったべべ貝を入れます。
4.再沸騰したころに、お箸で一混ぜすると、殻と身が外れだすので、これで茹で上がり。火を止めます。
5.べべ貝の茹で汁は、ご飯を炊くときに使用するのでペーパーなどで濾こして冷ましておきます。
6.べべ貝は、身と殻を分け、身を冷ましておきます。(身と殻は茹でたときに外れてしまっているので、より分けるという感じ)
7.炊飯器にお米と塩、お酒、薄口醤油、冷ましておいた身を1/3量程度入れ、2合目の線まで冷ましておいた茹で汁を加え、サッと混ぜ合わせ、炊飯器のスイッチを入れます。
8.炊き上がったら、残りのべべ貝の身を入れて混ぜたらでき上がり。
家庭によってはニンジン、ゴボウ、油揚げなどを入れたりもするのですが、磯の香りを感じたい場合は、見た目の華やかさに欠けるかもしれませんが、べべ貝のみで炊いたほうが断然香りが良いです。
「べべ貝」豆知識
べべ貝は藻類をエサとして、かなりの距離を移動する貝で、あんな小さな体で一日に10Km移動することもあるのだとか。
味は、アワビやトコブシを凝縮したような旨味を感じるという人も多く、一度食べたらやみつきになってしまうかもしれませんね。
多くの貝類同様、低脂肪、低カロリーなのに、ミネラル、良質のたんぱく質が摂取できるのが魅力。
ただ、べべ貝そのものに塩分も含むので、調理の際には、お塩は控えめに。磯の風味とべべ貝の持つ旨味だけで十分に楽しむことができます。