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B級グルメ発祥の地、 八戸から ─青森県八戸市─

2014年09月29日

 温かい食べ物を食べてホッとしたくなる季節、みなさんは何を食べたくなりますか?
 私がパッと思い浮かべたのは実家で食べるせんべい汁です。私の地元青森県八戸市のスーパーではこの時期、鍋物具材のとなりにせんべい汁の具材が置かれています。
 「せんべいを汁に入れるの?」と、地元を離れ大学に通っていたころ友人に驚かれましたが、私はむしろ「せんべい汁って郷土料理だったの?」と初めて知ったほど、幼いころから馴染みの深い料理でした。

せんべい汁とは

 せんべい汁は、肉や魚、野菜やキノコ等でだしを取った汁の中に小麦粉と塩で作る鍋用の南部せんべい(おつゆせんべい)を割って
入れて煮込んで作ります。
 イメージとしてはひっつみ(すいとん)のようなものですが、ひっつみとはまた違うせんべいならではの食感がせんべい汁が恋しくなる理由の一つかもしれません。
 具の味がしみたところにせんべいを入れるため、せんべいにはうまみがたっぷりと凝縮されていて、そこをせんべいのみみの部分の食感と共に味わうのがたまりません。

 味付けも様々ありますが、鶏としょうゆの組み合わせが一般的です。他には魚を入れたものや、馬肉鍋のうどん代わりに入れる場合もあり、アレンジがきくため自分好みのせんべい汁を作ることができます。
 せんべい自体は小麦粉・塩・重曹だけで作られる自然食で、せんべい以外にも様々な種類の具をたくさん入れるため栄養豊富でとってもヘルシーです。
 特にエネルギーを内に蓄えておくこの季節にはゴボウやニンジンなどの根菜類を中心に手軽に多くの栄養を取り入れ、体の芯から温まることのできる一品なのではないかと思います。

せんべい汁の歴史

 せんべい汁の歴史のはじまりは今から200年ほど前の江戸時代の後期にさかのぼります。
 そのころから主食は五穀に変わり、その影響を受けた南部八戸地方では麦やソバを使い、南部せんべいが誕生しました。
 南部せんべいはそのまま食べるだけでなく、野菜や漁や狩りでとった獲物と一緒にちぎって汁物に入れて食べたことがせんべい汁のはじまりと言われています。
 そして先日、せんべい汁に新しい歴史が刻まれました。八戸せんべい汁研究所がプロデュースしているB級グルメを集めた食の祭典「B-1グランプリ」で今年度、せんべい汁が見事最高賞のゴールドグランプリを受賞したのです。
 地元で昔から食べてきたものを多くの方に知っていただけることはやはりとてもうれしく、私自身も八戸出身者としてせんべい汁の味を伝えていくことでまちおこしの力になっていきたいと思います。

 八戸せんべい汁研究所が平成20年に行った飲食店調査の結果では、せんべい汁を提供しているお店は約200軒あり、東北だけではなく東京近郊にもあるため、都心にいながらも地元の味を堪能することができます。この時期、地元の温かさが恋しくなった方も、せんべい汁をまだ食べたことがないという方も、ぜひせんべい汁を食べてホッと一息してみてはいかがでしょうか?

せんべい汁のレシピ

材料(4人分)
・おつゆせんべい・・・4枚
・鶏もも肉   ・・・100g
・ゴボウ    ・・・100g
・ニンジン   ・・・50g
・シイタケ   ・・・4コ
・長ネギ    ・・・1本
・だし     ・・・適量
・料理酒    ・・・適量
・しょうゆ   ・・・大さじ2
・みりん    ・・・大さじ2
・塩      ・・・小さじ1

【作り方】
① ニンジンとゴボウはささがき。シイタケは細切りにする。
② 鍋で一口サイズに切った鶏肉を炒め、焼き色がついてきたら①で切った野菜を加え、軽く炒める。
③ ②を沸騰した湯で煮る。灰汁をとりつつ、特にゴボウが柔らかくなるまで煮る。
④ だしを加えて煮て、さらに調味料類を加えて煮る。この時、刻んだネギを入れると味がしまる。
⑤ せんべいは食べる直前に食べやすい大きさに割って入れる。(※)
⑥ せんべいが柔らかくなったら器に盛る。別にネギを刻んで上に飾りつけてできあがり。

※せんべいの煮込み時間は商品に書いてあるかと思いますが、堅さは噛み切れるくらいのやわらかさで、シコシコした感じが残っている状態がオススメです。