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五島列島の郷土料理「キビナゴのいり焼き」 ─長崎県─

2014年09月29日

わたしが生まれ育ったのは長崎県の五島列島というところです。
 五島列島は、九州長崎の西方100kmに浮かぶ大小140余りの島々からなり、美しい海と豊かな自然に恵まれ、四季を通して釣りやマリンスポーツなどが楽しめます。

 島のほぼ全域が西海国立公園に指定されるなど豊かな自然景観を有しています。

写真出典:長崎県栄養士会のHPより

東京で見つけた故郷の味

 東京で暮らすようになり、色々な食べ物のお店に行くことがありますが、たまにお店のメニューに「五島うどん」というものを見つけることがあります。
 五島うどんとは五島特産のうどんのことで、特徴は手打ちではなく
手延べです。
 厚めに丸く伸ばした生地を鎌で渦巻き状に切り出した後、太いロープを繊細な糸のようになるまで延ばすようにして作ります。
 このため普通のうどんより細く、断面が丸いのが特徴。たっぷりのお湯で茹で上げたあつあつの釜揚げうどんをしょうゆやアゴ(トビウオ)だしのたれで食べる「地獄炊き」が代表的な食べ方です。

 そして麺の食感は細いながらもコシがあり、とってもおいしいうどんなのです。
 こういった地元のお料理をたまに東京で見かけるのは誇らしくもあり、とってもうれしいことです。

「キビナゴ料理」

 さて、五島うどんもとても大好きですが、五島列島は海に囲まれた島ということで郷土料理といえば、やはり海産物のお料理が多いのです。
 そのなかでもわたしが幼い頃から慣れ親しんできた「キビナゴ料理」について紹介したいと思います。

 五島は日本でも指折りのキビナゴの産地です。キビナゴは、ウルメイワシ科の魚で体長は10cmほどの小さい魚。外洋に面した水のきれいな沿岸域を好み、大きな群れを作って回遊します。

 お刺身で食べるのももちろんとてもおいしいのですが、わたしが幼い頃からよく食べていたのは「キビナゴのいり焼き」というものです。
 いり焼きといっても焼くわけではなく、ダイコン、ハクサイなどの野菜と、キビナゴを一緒に煮て食べる鍋のようなお料理です。「いり焼き」とは、材料の魚などを炒いったことから名付けられたそうです。

 水炊きに似たもので、だしはキビナゴから出るのでしょうゆと調味料だけを使い、それに季節の野菜を加えて煮込みます。
 キビナゴがとってもおいしくいただけるお料理なのですが、小さい頃はキビナゴがうまく食べられませんでした。
 食べ方にもこだわりがあり、上手な人の食べ方はキビナゴを口の中で器用に骨と身を分けて、身の部分だけを食べ、なんとも器用にキビナゴの頭のついた骨だけを残して口から取り出す。
 というふうなのが上手な食べ方らしいのですが、なかなか身と骨を上手に外すことができず、頭も内臓も一緒に食べてしまい(内臓がとっても苦いのです!)、小さい子にはなかなか食べるのが難しいお料理だったと思います。
 でも両親には体によいから頭も骨も一緒に食べなさいと言われていました。

キビナゴの栄養価

 キビナゴのいり焼きはキビナゴ以外にもハクサイやエノキ、ニンジン、ダイコン、シュンギクなどがたっぷり入っているので野菜もたくさんとれてとってもヘルシーです。
 先に紹介した五島うどんを入れて一緒に食べるのもよいですね。またキビナゴは、フライなどにもすると自然に骨ごと食べられます。
 体の割には可食部が多いのも特徴です。生の身は半透明で、小骨が多いのですが脂肪が少なく甘みがあります。
 キビナゴは、DHAやEPAなどの不飽和脂肪酸を多く含むことから、脳梗塞や心筋梗塞の予防にも効果があるといわれています。骨ごと食べられるのでカルシウムもたっぷりとれることも特徴です。

 この他にも五島列島にはたくさんのおいしい食べ物があります。綺麗な海に育まれた新鮮な魚、アオリイカ、剣先イカの刺身やスルメなどを、ぜひ長崎に食べに来てみてください。

キビナゴのいり焼きレシピ

【材料】(4人分)
・キビナゴ・・・320g
・ダイコン・・・300g
・ハクサイ・・・200g
・エノキ茸・・・80g
・小ネギ ・・・100g
・シュンギク・・80g
▼A
・水   ・・・1L
・酒   ・・・1/4カップ
・薄口しょうゆ・大3
・塩   ・・・小1/5

【作り方】
①キビナゴは洗ってザルに上げる。
②ダイコンは5cmの長さに短冊切り、ハクサイはザク切り、エノキ茸は石づきを除き、小房に分ける。小ネギも5cmぐらいに切る。
③鍋にAを煮立ててダイコンをしばらく煮る。
④その他の材料も入れ、小ネギ、シュンギク、キビナゴは煮すぎないように白くなったら食べごろです。