ショクライフTOP > 栄養士の知恵袋 > 黒はんぺんと静岡おでん ─静岡県─
黒はんぺんと静岡おでん ─静岡県─
2014年10月02日
静岡の気候と食
静岡県は北部には富士山、南アルプスがそびえ、大井川などの大きな河川が駿河湾と遠州灘に注ぎ、温暖多雨の気候で海の幸、山の幸に恵まれている。
また、江戸と上方を結ぶ東海道の宿場53のうちほぼ半数が静岡県内にあり、以前から東西文化の交わるところであった。
上記を背景に、静岡では東西双方の食文化が混在しているのだが、逆に独自の食文化が育ちにくかった。豊富な食材とそれを生かした料理、それが静岡の食の特徴といえる。
海産物でいえば、駿河湾のマグロ、カツオ、由比の桜エビ、用宗のシラス、浜松のウナギなどが有名だ。
また、お茶やミカンにも代表されるように、農業も野菜、果樹、茶などの畑作が盛んである。
黒はんぺん
黒はんぺんとは、サバやイワシなどを使った茹で蒲鉾である。焼津市をはじめ静岡市や沼津市でも生産されており、静岡県中部を中心に県内ほぼ全域で食べられている。
私が黒はんぺんと出合ったのは静岡に移り住んだ小学生の時である。 学校給食で出されたそれは、灰色で半月形、魚特有の風味と歯
ごたえがあり、ざらっとした食感が口に残った。私が知る真っ白でふんわりとしたはんぺんとは似ても似つかないものだった。
当初はなかなか馴染めなかったが、慣れてしまえば味なもので、ついには駄菓子屋でおでんを自ら買って食べるまでになっていた。
(実は、静岡の駄菓子屋には、黒はんぺんが入ったおでんがおいてあるのだ)
静岡では、はんぺんといえば通常は黒はんぺんを指す。「はんぺん」の名の由来は、料理人の「半兵衛」が作ったことからという説や、半月型の形状から「半片」と呼ばれるようになったなど諸説ある。
その発祥は、駿府城にいた徳川家康が、イワシを日持ちするよう台所方の役人戸川半兵衛に命じたのが始まりともいわれている。
黒はんぺんの食べ方としては、そのままわさび醤油や生姜醤油、マヨネーズなどをつけたり、炙ったり、おでんなどの煮物に入れたり、フライにして食べることが多い。
青魚を骨や皮ごと練り込んでいるため、栄養的にもすぐれ、たんぱく質を始め、カルシウム、鉄、DHAやEPAなども含まれている。
子供からご年配の方まで手軽にいただける優秀な食品だが、残念なことに日持ちしないために消費の9割が県内にとどまるようである。
静岡おでん
静岡県を代表する料理として、昨今では富士宮の焼きそばや浜松餃子などがB級グルメとして取り上げられているが、ここでは静岡では昔からポピュラーな存在であるおでんを紹介したい。
他の地方のおでんとは異なるいくつかの特徴がある。黒はんぺんと牛すじが入っている、しょうゆ色が強い、串に刺さっている、青のりとだし粉(イワシの削り節)をかける、駄菓子屋にある、などである。
郷土料理の多くはハレ(非日常)とケ(日常)に二分されるが、おでんはというと、お祝いやお客様に出す豪華な食事とは異なり、飾り気のない普段の食事である。何かホッとくつろげる、見た目は地味でも味のあるソウルフード的な存在といえるのではないだろうか。
黒はんぺんに合わせてお勧めしたいのは黒ビールや焼酎の緑茶割り。お茶の渋み成分であるカテキンには、がんを予防し、コレステロールや中性脂肪を低下させる作用もあるといわれている。
ちなみに、最近の焼津駅売店では、はんぺんバーガーなるものも登場しているとか。
静岡おでんのレシピ
【材料 4人分】
牛すじ肉・・・200g
A【水1L・しょうゆ大さじ1】
ダイコン・・・2cm幅輪切り×4
ジャガイモ・・4個
こんにゃく・・1枚(三角に切る)
ゆで卵 ・・・4個
黒はんぺん・・4枚
竹輪 ・・・2本
すじ又はなると1本
ゴボウ巻き・・4本
さつま揚げ・・4枚
結び昆布・・・4個
B【水1.8L・カツオ節20g】
C【砂糖大さじ1・酒60ml・みりん大さじ1・しょうゆ80ml】
だし粉適量・青のり適量
【作り方】
1.牛すじは水(分量外)からゆでてゆでこぼし、Aを加えて約1時間煮る。
2.ダイコン、ジャガイモ、こんにゃくは下ゆでし(ダイコンは米のとぎ汁でゆでる)、練り製品は熱湯をかけて油抜きする。
3.鍋にBの水を沸かし、カツオ節を加えて沸騰したら火を弱め、2〜3分したらこす。
4.大きな鍋に3と1の汁ごと移し、Cを加えてひと煮立ちしたら串を刺した具材を入れ、中火で40 〜 50分煮る。
5.だし粉と青のりをかけていただく。