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富士吉田の豊かさは、 富士山の恵み ─山梨県─

2014年10月02日

 富士北麓、富士山の北に位置するのが、山梨県富士吉田市です。標高は800 ~ 900mと高く、市内には、富士山の山梨県側唯一の登り口(吉田口)があります。
 富士山は、巨大な水がめです。その山腹に降った雪や雨は、地下の濾過装置で数十年という長い歳月をかけて磨かれ、麓にこんこんと湧き出します。
 その清らかな水は、ミネラルをたっぷり含んだ富士山の恵みです。この水の力が、食べ物をとても美味しくしてくれ、人の心も豊かにしてくれます。


【モツ煮込み】

富士北麓地域の風土が作り上げた「ほうと う、うどん」

 「ほうとう」は山梨の郷土料理であり、戦国武将の武田信玄にも、ゆかりがあります。
 山に囲まれた山梨では、米を作るのに必要な水田が少ないため、山地を切り開き小麦を作りました。小麦粉を練って平らにした麺とかぼちゃなどの野菜やキノコを一緒に鍋で煮込めば栄養価も高く小麦粉の節約にもなり、手軽に作れるため、数々の合戦に赴いた武田信玄に陣中食として好まれたのが、ほうとうです。
 そして、最近、全国に浸透してきたのが、「吉田のうどん」です。江戸時代に富士山信仰の富士講が、隆盛し、富士吉田を中心とする富士北麓地域では、参拝者に居住家屋をお昼時だけ解放して「うどん」を提供するようになりました。
 また江戸末期から、昭和時代、耕作地に恵まれなかったこの地の主な産業は、養蚕や、機織で、女性が担い手でした。
 そんな忙しい女性に代わって、行商から帰ってきた男性がコシの強いうどんを昼食に打っていたそうです。
 手ごね、寝かせ、足ふみと、惜しみなく手間をかける麺には小麦の味がギュッと閉じ込められ、汁の旨さに負けない、噛めば噛むほど味が出る、堅めのねじれ麺ができ上がります。
 うどんの具は、キャベツ、油揚げ、人参、ネギ、肉などが多く、中でも肉は馬肉の甘辛煮をのせるのが特徴です。
キャベツは、シャキシャキ感が弾力のある麺に合うばかりでなく、消化を助けるビタミンUを含み、堅い麺との相性は抜群です。

富士吉田ならではの食し方

 うどんの珍しい食べ方として、「湯盛り」というものがあります。これは、釜揚げスタイルで、茹でたうどんをそのまま器に入れ、鰹節をのせて湯気で踊らせ、醤油を少し垂らして、うどんそのものの味をいただく、地元ならではの食べ方です。
 太くて、もっちりしたうどんは、塩味がちょっとして、忘れられない食感になること、間違いなしです。
 また、富士吉田では、宴会や祝儀などのときは、必ず「うどん」を食べて終わりにするという「うどん好き」ならではの行事の流れがあります。
 そして、もうひとつ、うどんに、欠かせないものがあります。それを地元では「すりだね」と言います。ゴマ、山椒、唐辛子などから作る薬味は、店ごとに味の違いがあり、うどんの味を深めてくれ、くせになる辛さがたまりません。
 昔は、「南蛮」といって、味噌に青唐辛子を刻んで混ぜた南蛮味噌をうどんの薬味にし、食べていました。味噌にネギと調味料を加えたネギ味噌や、新じゃがを甘辛味で炒めるあぶら味噌なども、富士吉田の家庭に受け継がれきた味噌文化を支える郷土料理です。

桜肉

 この地域には昔から馬の肉を食べる習慣があります。刺身は、馬刺し。肉うどんには、甘辛煮、そして、モツといえば馬のモツ煮込みです。馬肉は、高タンパク低脂肪で鉄分が豊富です。脂肪分が少ないので、胃もたれもなく、コラーゲンがいっぱいです。
 スポーツ選手や、美容に気をつけたい方にお勧めです。このように受け継がれている大自然の贈り物を、世界遺産の地、富士吉田で是非、味わってみてください。

モツ煮込みの作り方(4人分)

【材料】
馬モツ・・・400g
人参 ・・・1本
大根 ・・・1/2本
こんにゃく・1枚
生姜 ・・・1片
砂糖 ・・・30g
日本酒・・・60c
味噌 ・・・100g
長ネギ少々・七味唐辛子少々

【作り方】
①モツは水でよく洗い、2回ほど茹でこぼす。
②人参、大根はイチョウ切りに、こんにゃくは縦に3等分にしたものをスライスし、フライパンで炒る。
③モツと②の材料を鍋に入れ、酒と水、砂糖、生姜を入れて煮込む。
④しばらく煮込んだら、味噌を入れ、さらに煮込む。
⑤味を調えたら、器に入れ、長ネギをのせ、七味唐辛子をかける。