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富山県の意外な郷土料理 ─富山県─

2014年10月03日

 皆さんは「富山県」の有名な食べ物と言えばどのような物を思い浮かべますか?
 駅弁で有名な「ます寿司」氷見の「寒ブリ」富山湾の幸「ほたるいか」「白えび」といった魚介類が中心かと思います。もちろん地元で採れる新鮮な魚介類は富山の自慢の一つであります。


写真;昆布巻かまぼこ
(写真提供 公益社団法人富山県観光連盟)

昆布の年間支出金額全国1位

 富山出身の私が富山の郷土料理で真っ先に思い出す物はズバリ「昆布」です。
 富山では数々の昆布を使った料理があります。家計調査年報によれば富山市の一世帯当たりの昆布の年間支出金額は49年連続全国1位というデータがあるほどです。
 富山湾でたくさんの昆布が採れるからでしょうか?富山湾では残念ながら昆布はほとんど採れません。国内の昆布の9割は北海道産です。昆布の産地ではない富山県でなぜこれほど多くの昆布が消費されているのでしょうか?
 その理由の一つに江戸時代から明治時代にかけて北海道から日本海沿岸を航路とする「北前船」の影響があります。当時富山の商人は「北前船」を運航させ北海道から昆布やニシン、マスなどの海産物を仕入れ、その帰りに米、酒、綿織物などを北海道で売るという交易をしてきました。
 当時の富山の漁師さんの多くは漁業だけの収入では生活していくのに厳しかったため、北海道へ出稼ぎに行っていたそうで、特に昆布の産地で有名な羅臼地方へ行く事が多かったようです。
 出稼ぎの帰りに大量の昆布を持ち帰ったと言われています。現に羅臼町の人口の7割は富山にゆかりのある人で占められており富山からの移住者が多く関わっていたようです。
 このように富山県民にとって昆布は日々の家庭料理に欠かせない食材として古くから利用されてきました。

富山の代表的な昆布料理と栄養

 富山の代表的な昆布料理をご紹介したいと思います。
 他の地域にはない使い方をしているのが富山ならではの特色と言えます。
 その昆布料理の中で私が子供の頃から慣れ親しんだ料理として、刺身を昆布でしめた「刺身の昆布〆(こんぶじめ)」、かまぼこを渦巻き状に昆布で巻いた「昆布巻かまぼこ」、おにぎりのまわりを海苔の代わりにとろろ昆布でまぶした「昆布おにぎり」などがあります。どれも県外の方には珍しい物のようです。
 
 その中の一つで家庭でも簡単に作れる「刺身の昆布〆」のレシピをご紹介したいと思います。
 昆布〆とは刺身を昆布でしめて水分をとると共に昆布の旨み成分を魚にしみ込ませた刺身のことです。魚のイノシン酸と昆布のグルタミン酸が合わさり、刺身では味わえない絶妙な旨みが特徴です。
 生の刺身より日持ちするので余った刺身などがあればぜひ作ってみて下さい。
 お勧めはかじきや鯛などの白身魚やいか、甘えびなどの淡白な刺身です。マグロやブリなど脂ののった魚は昆布〆には合いません。
 
 気になる昆布の栄養ですが、昆布はアルカリ性食品であるので肉や加工食品が多い現代の酸性に偏りがちな食生活をリセットしてくれます。昆布の食物繊維は腸の働きを活発にして便通をよくするだけでなく、糖質の吸収を緩やかにするため肥満防止につながります。アルギン酸は食塩の体内への取り込みを抑える働きがあるため、高血圧の予防になります。また骨を作るのに欠かせないカルシウム、貧血を改善する鉄、皮膚の新陳代謝をスムーズにさせ美肌作りに効果のあるビタミン・ミネラルなどが豊富に含まれています。
 これらの栄養素から考えて昆布は理想的な健康食品であることは間違いありません。

昆布〆レシピ

<材料 4人分>

*昆布・・・2枚(幅が広めで平らなもの約30cm×20cm位)
*刺身・・・200 ~ 300g(白身魚など淡白な魚)
*酢 ・・・ 少々
*生姜・・・少々(千切り)
*ラップ・ガーゼなど


<作り方>
① 刺身はサクで買ってきた刺身であれば少し厚めのそぎ切りにする。
② 平らな所に昆布より大きめのラップを敷きその上に昆布を置き、酢を含ませたガーゼで昆布の表面を軽く拭く(昆布を柔らかくさせ、殺菌効果も得られる)。
③ ②に①の刺身を重ならない様に並べ、生姜の千切りを所々に散らす。
④ ③をラップごと巻きすを巻くように昆布に刺身を巻きこみ、しっかり包んで冷蔵庫で一晩寝かせる。 


☆ 作ってから2~3日日持ちしますが、寝かせすぎると粘りが強く出るので一晩位がお勧めです。また〆た昆布も食べられます。

皆さんもぜひ今までだしを取る事にしか活躍しなかった昆布を「食べる昆布」として見直してあげて下さい。
 新しい美味しさを発見すると共にきっと良い健康効果が得られるで
しょう。美味しくて健康的な昆布料理を食べに富山県に足を運んでみてはいかがですか?