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はすと殿様と岩国寿司 ─山口県─

2014年10月03日

 岩国地域の特産は何といっても“はす”です。色白で肉厚く、とくに他地域のはすは穴が八つあるのに対して、岩国のものは穴が九つあり岩国藩主吉川公の家紋の九曜紋と同じというので、藩主がずいぶんお喜びになったという逸話があります。
 はすは低湿の水田でつくられることが多く、女性にはつらい作業です。四月に、種ばすの植えつけを行います。七月、八月のころになり、葉が青々と茂り人間の背より高くなると、はすが太りはじめます。十月くらいになると、そろそろはすを掘ってもいいのですが、お祭りやお正月などの行事のときだけ掘り出して料理に使います。
 岩国地域ではお祭りなどの行事に必ず出される郷土料理には、どれにも、はすをつかいます。


写真:大平と岩国寿司
(岩国市公式観光ホームページより)

江戸時代から伝わる“岩国寿司”

 岩国では、すしといえば角ずしで古くから伝わっている押しずしで“岩国寿司”とも呼ばれます。江戸時代から始まったともいわれ、時の藩主吉川広家公に命じられた料理番によって考案されたといわれています。
 広家公は城山(海抜200m)に岩国城を築城しましたが、そこで保存、運搬に便利な岩国寿司が重宝されました。
 別名“殿様寿司”とも言われ、戦さの食糧として武家階級において食されていたのが、明治の初期になって庶民の口にも入るようになりました。現在では大平(おおひら)とともに御祝事には欠かすことの出来ない郷土料理の一つになっています。

老人ホームでの実演会にて

 私の勤めていた特別養護老人ホームでは、毎年1回、4月に利用者のお年寄のみなさんと一緒に実演会を行います。
 見学する人、参加する人とさまざまですが、行事会の中でこの実演会が一番人気です。お年寄のみなさんがたのしくすごし、笑顔が沢山見られる最高の日です。
 私達スタッフもやりがいがあり、前日からいそがしくバタバタしながらも、お年寄のみなさんの笑顔を思い出して準備をすすめます。
 当日は、お年寄のみなさんも早くからデイルームにでて、実演会の始まりを待っています。
 岩国寿司をつくるときにいつもは重石で押さえているのですが、それでは間に合わないので、実演をされるインストラクターさんがナイロンを敷いてその上に体をのせ、足ぶみをして固めます。これをしたいと、お年寄りの中からも参加される方がいます。
 お昼どきの2時間位ですが、みなさん大喜びでおかわりをされ、「おいしい、おいしい」と言って食べられます。「長生きしてよかった」という一言もあります。
 私たちもやってよかったという思いがいっぱいです。郷土料理は私達を暖かく包んでくれます。地域の活性化を願うふるさとの味は、私達子供から大人まで勇気づけてくれるものです。
 まだまだ沢山の郷土料理がありますが、語りつくせないので、代表として岩国寿司を御紹介させて頂きました。
 みなさん、山口県にも足を延ばして遊びに来て下さい!!

岩国寿司

【材料】
酢漬けにしたはす
しいたけ(甘からく味付けしたもの)
ごぼう
人参
錦糸卵
白身魚の酢じめ
さんしょうの葉(春)
しその葉(夏)    
きざんだものをせる


【作り方】
一度に4~5升の米を仕込む豪快な作り方に定評があります。
①まずは味付けした炊き立てのご飯に酢じめをした魚を混ぜ、木の枠につめていく。
②その上に錦糸卵やでんぶ、味つけしたしいたけなどを飾り、仕切りに芭蕉の葉を敷きつめる。仕切りにはれんこんの葉やちしゃも使われる。
③さらに上にご飯をつめ、飾りの具を置くことをくり返し、一番上には木の蓋をして、重しをのせて押さえる。
④しばらくして時間をおいて枠をはずし、長包丁で切り分ける。

やや甘みが勝っているが、現代人の味覚にも十分耐えうる味で、家庭でつくられ喜ばれています。