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瀬戸内海沿岸の郷土料理 「ままかり寿司」 ─岡山県南部─

2014年10月03日

 岡山県と聞いて「どこ?」と思われる方は多いと思います。
中国地方南東部に位置する県で、北部は中国山地がそびえ、中部は吉備高原、南部は瀬戸内海をのぞむ平野丘陵地帯が位置しています。東は兵庫県、西は広島県、南は瀬戸内海をはさんで香川県、北は鳥取県と隣接しています。
 昔から中四国地方の交通の要衝として重要な位置にありました。

 食文化では豊饒の大地が育む旨い米に旨い酒。そして果物の産地としても有名で全国的に知られているものでは桃やマスカットが挙げられます。また、瀬戸内海をのぞむ沿岸地域での魚料理が多彩です。その中で岡山県を代表する魚は、鰆やままかりですが今回は特に有名なままかりについて紹介をしたいと思います。


写真:ままかり寿司
(岡山県栄養士会HPより)

ままかりとは…

 標準和名はサッパとも言うイワシ科の小魚で、あまりに美味のため、ついつい箸が進んで「自分の家のご飯(ママ)が足りなくなり、隣から借りて(カリ)きて食べた」と言われることから岡山県ではこの名で呼ばれるようになったと言われています。漢字では「飯借り」と書きます。
 ままかり料理は岡山の郷土料理で、塩焼きやから揚げ、刺身、酢漬けetc・・・がありますが、やはり中でも酢漬けは小骨も気にならず美味で食べられるためよく知られた食べ方です。
 ままかりは豊漁と不漁の差が大きい魚であるため、豊漁で食べきれなかったものを酢漬けにして保存したのが始まり言われています。

ままかり寿司

 私の生まれ育った岡山県南部地方では、そのままかりの酢漬けで作ったままかり寿司がとても有名です。
 お祭りやハレの日にはままかり寿司は欠かすことのできないものです。このあたりでは波静かで天気の良い日、また祭りや家族の祝い事などあるときは海へ行ってままかりを釣ってきて、ままかり寿司を作
るのが習わしのようになっています。たくさん作ったときは「珍しくもないのですが、味を見てください」と言葉を添えて近所に届けます。これもこの地方ならではのことです。

 私の父親は釣りが趣味でままかりをよく釣ってきてはままかり寿司をつくり食卓に並んでいたため飽きるほど食べてきましたが、ままかりの栄養素は豊富なので今まで健康でいられたのもそのお陰なのかもしれません。

ままかりの栄養素は…

 体長は10~ 15cmで背が緑黒色、腹が銀白色をした青魚なので、脂質・カルシウム・ビタミンA・D・B12などを豊富に含んでいます。
 脂質は多価不飽和脂肪酸のEPAやDHAで、EPAは血中コレステロールを下げて血液をサラサラにし、DHAは脳の働きを高めます。またカルシウムも多く含まれていて骨や歯を強化して精神安定に働く作用があります。
 特に酢漬けは酢で〆てあるため吸収が良くなっています。ですから、ままかりと酢の相性は良く、ままかりにとって酢の存在はとても重要なのです。
 年中を通して漁獲はできますが、産卵期直前の7月は骨や皮もやわらかく、また冬季に向けて脂質を蓄える10 ~ 11月が旬といわれ、この時期に良質な脂質が含まれています。

ままかり寿司レシピ

【材料〈4人分〉】
ままかり・・・20尾 
塩少々・酢適量・わさび少々、
甘酢A(酢大さじ4・砂糖大さじ5・塩少々)
〈すし飯〉
米3カップ、水3・1/3カップ、
出し昆布10cm角1枚、

甘酢B(酢大さじ4・砂糖大さじ4・塩大さじ1/2)

◇注意点!!◇
ままかりは足が早いので、鮮度の良いものを用意し、十分酢で〆て下さい。
 

【作り方】
①ままかりを洗ってうろこと頭・内臓を除き、塩を軽くふり30分ほど置く。塩がまわったら酢で洗い流し、甘酢Aに浸す。
≪好みで30分から数時間or数日≫
単品でままかりの酢漬けの場合はだし汁、タカの爪などを加えて漬けて食べる。

②腹開きにして骨を取り除く。良く酢で〆ておくと手開きすることができる。
③すし飯を準備する。水加減は少なめにする。水と昆布を入れて30分浸漬してから火にかけ、昆布は沸騰直前に取り出す。
④炊き上がったら10分程蒸らし、ごはんが熱いうちに甘酢Bをかけ、切るように混ぜる。
⑤すし飯が冷めたら、にぎりずしのように軽く握って①のままかりをのせる。好みでわさびをごはんに塗る。

★薄切りのしょうがの酢漬けも、ままかりとよく合います。ままかりと一緒に漬け込んでわさびの代わりに添えてお試し下さい。