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長崎県の郷土料理「ヒカド」─長崎県─
2014年11月11日
私の故郷の長崎県は、九州の北西部に位置し、隣の佐賀県と接している部分以外は全て海に囲まれているという地形です。
大小900以上の島があり、その数は日本一。
海の幸も山の幸も豊富なとてもよいところです。
外国の影響を受けた風景と郷土料理
長崎県は昔から諸外国との貿易が盛んでした。江戸時代の鎖国政策によって日本が諸外国との繋がりを断った後、唯一貿易を認められていた場所としても知られています。
そのためか、長崎市内には西洋や中国の文化の影響を受けた建物や風景が混在しています。
私自身、そのような風景を見るのが好きで、地元に帰省した時は必ず長崎市内をぶらぶらと散歩しながらその情緒に浸るのです。
市内を走る路面電車の窓からも様々な文化的建造物を見ることが出来るのですが、私のオススメとしては絶対に徒歩。
ガイドブックに載っているような観光名所は長崎駅から徒歩で行けるものも多いので、散策のつもりで歩きながら、路面電車の車窓からは見えない路地裏などにも足を運んでみると、意外な発見ができるかもしれません。
また長崎の郷土料理にも少なからずその影響はあるようです。
「ヒカド」
私が今回紹介する郷土料理は「ヒカド」と呼ばれるもの。
「ヒカド」と聞いてどんな料理か想像できる人は少ないかもしれません。友人などに教えても、初めて聞いた人にはそれが料理の名前だとすら思われません(笑)。
「ヒカド」とはポルトガル語で「picado」(細かく刻んだ、の意)に由来すると言われています。
元は長崎を訪れたポルトガル人やスペイン人によって伝えられた煮込み料理だったのですが、鎖国の影響で手に入らなくなった材料もあり、他の材料で代用していったものが長崎独自の郷土料理「ヒカド」として定着していったのです。
「ヒカド」は肉や魚、野菜を小さく切って醤油やみりんで煮込むものですが、最も特徴的なのはすりおろしたさつまいもでとろみをつけるという点でしょうか。
元々はパンでとろみをつけていたということですが、手に入らなくなったため、中国の調理法をヒントに、さつまいもでとろみをつけることを思いついたのだとか。
西洋と中華のエッセンスが交わって生まれたあたりが、まさに長崎の郷土料理といった感じです。ちなみに肉・魚・野菜といった材料やとろりとした口当たり、ふんわりと優しい甘さは「和風シチュー」と
も例えられます。
「ヒカド」の栄養価
「ヒカド」はとろみのある煮込み料理なので、寒い時期には身体を温めるのにぴったりの料理です。
時期的にはやはり寒くなってくる秋から冬によく食べられる料理なので、使われる食材も根菜や身体を温める作用のあるものが多く、さつまいもの他に大根や人参、椎茸にねぎなどが使われます。
さつまいもに含まれるビタミンCや人参に含まれるビタミンAには抗酸化作用があり、免疫力を高めて風邪の予防などにも効果的です。
根菜類、きのこ類には食物繊維も豊富で、血糖値の上昇を緩やかにする、悪玉コレステロールの増加を抑える、整腸作用によって発がん物質の抑制するなど、生活習慣病の予防に重要な働きが期待できます。
また肉と魚の両方を使っているので、身体を作るのに必要な良質なたんぱく質もしっかり摂ることができます。
「ヒカド」レシピ
≪材料≫ (2人分)
豚ばら肉・・50g
ねぎ ・・・適量
まぐろ・・・50g(もしくはぶり)
出汁 ・・・1カップ
さつまいも・100g
酒 ・・・小さじ1
大根 ・・・100g
塩 ・・・小さじ1/2
人参 ・・・50g
薄口醤油・・小さじ1/4
椎茸 ・・・20g
※具材は自由にアレンジしてもらって構いません。
お店によっては、時期によりカボチャや冬瓜、かぶを入れたり、長崎でよく使われるアゴ(トビウオ)出汁で煮込んだりもします。
≪作り方≫
①豚肉、魚、さつまいもの半量、大根、人参、椎茸を2cm角に切る。ねぎは小口切り。
②肉、魚は表面をさっと湯通しして臭みを取る。
③切った野菜を出汁で煮込む。野菜が柔らかくなったら肉、魚を入れてアクを取りながら煮込む。
④酒、塩、薄口醤油で味を調える。
⑤残りの半量のさつまいもをすりおろして加え、煮込む。
⑥器に盛り付け、ねぎを散らす。