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言葉にして伝える技術

2015年02月12日

テレビでよく見るグルメ番組で、グルメレポーターがこんなコメントを
言っているシーンをよく見かけませんか?
「肉汁が口の中にジュワっと広がってきて、とてもジューシーです。」
「生姜が効いていて身体が温まって美味しいですね。」
「表面がカリッとしていて、中はフワフワです。」
「旨味が口いっぱいに広がります。」
などなど。

どれもありがちなコメントで、何となく私たちも納得してしまったりするのですが
よく考えてみると、この表現では食材の味や美味しさを的確に
言い表せていないのがおわかりになりますか?

その食材がどんな味で、どんな風味で、どんな香りで…
本当はどうなのか、を深く考えずに何となく表現をして、
それでよしとなっている傾向が残念ながらあります。

FacebookやTwitter、ブログ、メールマガジンなど
プライベートでも仕事でも、文章表現をする場面は増えているのにも関わらず
表現力を磨くための訓練はほとんど受けていません。

そんな表現力(特に食のシーン)の乏しさに
警鐘を鳴らしているのが、ワインのおいしさを的確に伝える職業である
世界一の「ソムリエ」と言われる田崎真也氏の著書
「言葉にして伝える技術」-ソムリエの表現力- です。

おいしさを的確に伝える職業「ソムリエ」

ワインの味を言葉で表現するためのテイスティング用語があります。
ワインのテイスティング用語は日本酒とは比べものにならないほど
たくさんありますが、
その中の一例をご紹介します♪

●ドライ…辛口のこと
●軽い…さらっとしていること。
●重い…コクがあって重量感を感じること。
●ビロードのような…のど越しが滑らかなワインのこと。
●円熟した…充分に熟成していてしっかり落ち着いている味のこと。
●ブーケ…発酵後に出てくる香りのこと。

このようにソムリエは味、香り、美味しさを的確に正しく伝えるための
ボキャブラリーを豊富に持ち合わせています。
ワイン同様、食事の美味しさの表現力も豊かにし、
的確に伝える技術を磨くことで、今以上に食のシーンを充実させることが
できるのではないでしょうか。

栄養士も身に付けたい伝える力

おいしさを的確に伝えるためには、もちろんソムリエのような訓練も必要ですが、
表現のバリエーション、言葉の数を増やすためには
とにかくいろんな味を体験する、ということがポイントではないでしょうか。
体験した味の幅が狭ければ、味を比べるものさしをほとんど持ち合わせて
いないことと同じです。

前に食べた〇〇に比べて、どの部分が違って美味しいのかな?等
食のスペシャリストである管理栄養士・栄養士は特に
味の体験をたくさんする、ということは重要だと感じます。

また、最近のグルメレポーターの表現にもあるように
せっかくある感覚の「触感」ばかりが頻繁に使われている傾向があるように感じます。
「カリッとふわふわ」
「ジュワ―と口の中に広がる」
「温かくて美味しい」などなど。
これらはすべて触感で感じたコメントであり、
味の美味しさは全く表現できていません。

私たちは触覚だけではなく、味覚、嗅覚、聴覚・視覚が備わっているわけですので
それらの感覚を研ぎ澄まし
味わいを的確に表現していく表現力を身につけたいものですね。