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《栄養士☆成功事例インタビュー》管理栄養士 椎橋聡子さま 【ワクワクする気持ちを大切に会社設立!!】第四部

2016年12月09日

《栄養士✩成功事例インタビュー》株式会社FoodSmile代表取締役 椎橋聡子さま “ワクワク”する気持ちを大切にして会社設立!!
~食を通して多くの人に感動を与えたい、
という想いで独立起業を果たすまでの道のりとは(第四部)~

栄養士✩成功事例インタビューの第5回目は、株式会社Food Smile代表取締役・椎橋聡子さんです。
第一部では、椎橋さんが栄養士になったきっかけがおじいさんの病気だったこと、
またその時に抱いた想いを実現するためには、フリーランスでは限界があると感じたので
会社をつくった、というお話を聞かせていただきました。

続いて第二部では、栄養士になるためにまずは専門学校に入った椎橋さんの卒業してからのお話でした。

最初に勤務した病院も、その次に入った保育園も、
それぞれ幅広い仕事を経験することはできたことで栄養士としての基礎力が身に付きました。
しかし椎橋さんは、やりたいことを明確に持ってその職場を選び、
そのやりたいことをある程度達成してから、次の職場へと移りました。

3つ目の職場となった食のベンチャー企業も、
椎橋さんの常に前へ進みたいという意欲や、
自分を成長させたいという向上心による新たなチャレンジだったに違いありません。

第三部では、受験のためにベンチャー企業を辞め、人生一番の猛勉強の末、
晴れて「管理栄養士」となった椎橋さんが、新たなスタートを切ったところからはじまります。
それは同時に、組織を離れ、フリーランスとしての活動の出発でもありました。
その後、フリーランスとして活動を経て、会社設立に至るまでの経緯や、
その際の心境などを、第三部ではもっと深く踏み込んで聞き出しています。


そして最終回の第四部は、椎橋さんが現在得意とする分野についてのお話です。
ここでも突っ込んだ質問もさせていただいています。
どうか最後まで、じっくり読んでいただけたら幸いです。

得意分野と市場

※今回も学習院女子大学名誉教授の江口泰広氏とショクライフ麦島健生との
対談形式でインタビューを行いました。
臨場感を大切にお届けしたいと考え、対談形式の構成となっております。


江口先生:
最終回は、椎橋さんの得意分野についてお聞きしたいと思います。
改めて、椎橋さんの管理栄養士としての得意分野は何ですか?

椎橋さん:
管理栄養士といっても料理研究家や病院栄養士・保育園栄養士など、
活躍するフィールドやカテゴリーは幅広いですが、その中でも私が得意とするのは、「スポーツ栄養」の分野です。

スポーツ栄養はアスリートがパフォーマンスを最大限発揮させるためには、
どんな食事を、どのタイミングで、どのように摂取すればいいか、
をサポートするものです。

「スポーツ栄養」は競技、トレーニング内容、個人差などもあるので、
1to1の細かな対応が必要となる食事学で、毎回サポートをする対象が
変わるたびに、頭を悩ませているのですが、苦労した分、そのアスリートが
結果を出したりしてくれると他では感じられない達成感が得られます。

またスポーツ栄養学は、パフォーマンスを最大限に発揮するための食事で
あるので、アスリート以外でも、経営者やサラリーマン、受験生など
パフォーマンスを発揮させたいシーンはスポーツ以外でもたくさんあります。

ですので、「スポーツ栄養」の考え方を軸に、パフォーマンスを最大限発揮するための
「パフォーマンス栄養学(勝手に名前を付けました)」という切り口で、
様々なシーンで役立つ食事について、今はセミナーを中心に動いています。

現在はセミナーが中心ですが、今後は会社で講師を育成したり、
またはWEBやメール、アプリなどで遠隔地の方もサポートできるようなサービスも検討中です。

得意分野としているスポーツ栄養(パフォーマンス栄養学)も、
私だけができるサービスで終わってしまえば個人事業主と同じで、
アプローチできる人数が限られてしまうため、会社で人材を育成し、
またサービスの仕組み作りをして広めていきたいと考えています。


江口先生:
なるほど、どんな仕事でも多かれ少なかれパフォーマンスは必要ですから、
市場は意外に大きいかもしれませんね。
自分もアスリートじゃないとできないんですか?


椎橋さん:
絶対にアスリート経験がなければダメ、ということはありません。
ですが、やはり経験がある人の方がやりやすいでしょうね。
ちなみに私はソフトボールと水泳経験者ですが、自分でやっていたからこそ、
「ここが辛いところだろうな」「ここはこうしてほしい」
といったポイントがわかる、ということはあると思います。

書籍やWEBからの情報をそのまま伝えることは誰にでもできるので
大切なのは、アスリートの気持ちを共有することだと思います。
何事も人に指導する前に自分でやってみる経験が大切だと思っています。


江口先生:
仕事の依頼はどんなところからくるんですか?


椎橋さん:
小規模ですが、大学生やクラブチームなどからの依頼や、
行政からだと、子供にスポーツを教えているボランティアさんに向けた栄養教育など。
これもありがたいことに、口コミや知人経由で紹介いただくことが多いです。

まだスポーツ栄養ができる管理栄養士も少なく、
日本栄養士会と日本体育協会が付与している「公認スポーツ栄養士」という資格もありますが、
狭き門でまだ全国に150人程度しか合格者がいないのが現状です。
私もこの資格に興味があるので、近い将来合格できるように頑張ろうと
思っています。


江口先生:
いいですね。新しいカテゴリーでは、最初に資格を取った人がリーダーになります。
椎橋さんも最初ではないにしてもまだ間に合いますよ。
“先行優位性”というものもありますから、一刻も早く資格を取って、
リーダーを目指すべきです。
潜在ニーズがたくさんあって、しかも参入が厳しいという、すごくいい市場です。


椎橋さん:
私もそう思います。大手企業が参入している事業に小さな会社が手を出しても、
資金的にも組織的にも敵いませんから、
栄養と食事の分野でのニッチというか、
まだ誰も手を付けていないところをいつも探しています。

「スポーツ栄養士」も、資格保持者はすでに150人程度いるようですが、
その中で会社としてビジネス展開している人はほとんどいないと思います。


江口先生:
ベター戦略よりもディファレンス戦略、ということですね。
いいセン持っていると思いますよ。

独立に必要な基準とは

江口先生:
独立する人が持っている基準があるんだけど、何だかわかりますか?


椎橋さん:
わからないです。好奇心とか?ですか。


江口先生:
惜しい。好奇心や、椎橋さんが言う“ワクワク”する気持ちは、
要するに“心のエネルギー”ですよね。心のエネルギーとしては、
もっと大きなものがあるでしょう?


椎橋さん:
「夢」ですかね?


江口先生:
そう、「夢」なんですよ。
私は「夢」こそが地球上で最大のエネルギーと思っていてね、
「夢」を持っている人と持っていない人とでは人生が変わります。
独立する人はみんなこれを持っている。
もちろん、単なるイメージだけの夢や理想ではなく、裏付けがないとダメですけどね。


椎橋さん:
私の判断基準は、何度も言っているように、自分の気持ちが一番。
2番目は“人のためになるかどうか”、3番目が“自分の成長につながるかどうか”です。


江口先生:
椎橋さんは今、より多くの人を食で健康にしたい、と思っているわけだけど、
国民が健康になれば、平和に貢献できる、というようなストーリーができそうですね。
もう1つの「カロリー計算・栄養計算センター」の方はどうですか?


椎橋さん:
これについてはまだあまり情報発信ができていないのですが、
問い合わせは少しずつ増えてきています。
平成32年のカロリー表示義務化に向けて、飲食店などでは
必要に迫られているので、これからだと思っています。


江口先生:
少なくとも駆け込み需要はありそうですね。
僕は別の会社にして分けたほうがいいと思いますよ。混乱しちゃうから。
いずれにしても、すべての飲食店が対象ですから、
潜在市場はものすごく大きいですよね。

何事も最初にやったもの勝ちだから、今のうちから網を張っておく
のはいいと思います。

しかしこうして話を聞いていると、スポーツ栄養にしても
カロリー計算にしても“市場創造型”のビジネスといえますね。
夢があります。椎橋さんにはそうした視点もありながら、
“悔しさ”や“ワクワク”といった心のエネルギーも持っている。

何より、椎橋さんのその“明るさ”がいいですね。
ビジネスの世界は明るくないとダメ。
明るさを持っているだけで勝てますから。


椎橋さん:
ありがとうございました。


(完)


いかがだったでしょうか。
おじいさんの病気がきっかけで栄養士になった椎橋さん。
最初に入った病院と、次の保育園では大変な現場ではありましたが、
一通りの仕事を覚えることができいい経験ができたという前向きな椎橋さん。

その次に移った食のベンチャー企業で初めて組織というものを経験。
また企画やセミナーの講師など、ここで学んだことは、後のフリーランスとしての活動に役立ちました。

しかしその後、椎橋さんはフリーランスとしての仕事に限界を感じます。
どうにかしなくてはと思って立ち上げたのが、現在の椎橋さんの会社「Food Smile」です。

椎橋さんが物事を判断するときには、ある明確な判断基準があります。
それは自分が“ワクワク”できるかどうか。
会社を興す前も、“ワクワク”するような就職先がないか、探しましたが、
そんな会社がなかったので、じゃあ、自分で自分が“ワクワク”
できる会社をつくろう、という思いがありました。

では、何が椎橋さんを“ワクワク”させるのか。
それは、「多くの人を食で健康にしたい」「食で人に感動を与えたい」という想いです。
その想いを実現するために、会社をつくった、と椎橋さんは言います。


そんな椎橋さんですが、もちろん夢ばかりではありません。
ちゃんと具体的なビジネスの視点も構想も持っています。
現在のビジネスの柱は、「カロリー計算・栄養価計算センター」と
「パフォーマンス(スポーツ)栄養学」の2つ。

どちらも“市場創造型”のビジネスであり、将来性もあると、江口先生も感心していました。

読者の皆さんにおかれましては、そうした椎橋さんの辿ってきた経歴や、
会社設立への想い、ビジネスの考え方など、参考になるものがたくさん
あるのではないか、と思います。

とくに今の職場を辞めようかどうか迷っている方や、進路に悩んで
おられる方などは、きっと勇気をもらえることと存じます。

最後までお読みくださってまことにありがとうごいました。