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食物アレルギー豆知識
2016年01月21日
最近は食物アレルギーや花粉症など、
様々なアレルギーを持つ患者が増えてきています。
学校での食物アレルギーによる死亡事故など、アレルギーに関するニュースが
テレビで取り上げられることも増え、アレルギーへの関心度は
高まっているように感じます。
食物アレルギーは命に関わることなので、栄養相談や栄養指導の際に
誤った情報を伝えないためにも、基本的な情報は把握しつつ、
まだまだ発展途上の分野でもありますので、新しい情報に目を向け
アレルギーで悩み、困っている患者さんのサポートをしたいものですね。
食物アレルギーのタイプ
食物アレルギーといっても、発症するまでの経過や原因は様々です。
●即時型
食後2時間以内に、蕁麻疹、咳、呼吸困難を起こすタイプです。
食べ物に対して作られたIgE抗体が主な原因と考えられているタイプで
即時型で最も重症な症状がアナフィラキシーにあたります。
その他、即時型の特殊なタイプとして、今まで食べていた食品に対して
アレルギーを起こしてしまう2つのタイプがあります。
・口腔アレルギー症候群(OAS)
花粉アレルゲンのIgE抗体が、果物や野菜のアレルゲンにも反応するために
起こる即時型アレルギーです。
アレルゲンが消化されると反応しなくなるため、
通常は口の中がピリピリしたり
かゆくなったりするだけですが、まれに短時間に大量に食べることで
全身に症状が出てしまうこともあるものです。
このタイプは血液検査では診断がつきにくいため、皮膚試験によって診断が
行われます。
・食物依存性運動誘発アナフィラキシー
食べ物を食べただけだと症状は出ませんが、食後に運動が加わることで
アナフィラキシーが起こるタイプです。運動によって腸での消化や吸収に
変化が起きてアレルゲン性を残したたんぱく質が吸収されてしまって
起きると考えられています。
●新生児・乳児消化管アレルギー
ミルクや母親の母乳中の食物たんぱく質が原因で起こるタイプのアレルギーです。
新生児や乳児が血便や下痢などの消化器症状を起こします。
●食物アレルギーが関与する乳児アトピー性皮膚炎
乳児のアトピー性皮膚炎は、食物アレルギーが原因で、アレルゲンの除去で
湿疹などの皮膚炎がよくなる場合があります。
アトピー性皮膚炎の中で食物アレルギーの合併率は乳幼児では
約40%で、成長に伴い学童時では10%以下まで下がります。
臨床的交差反応性
エビやカニのように、似たような種類の食べ物の場合、それぞれに含まれる
たんぱく質も似ていたりします。
例えばエビのアレルゲンに対してできたIgE抗体が、
たんぱく質の構成が似ているカニに反応してしまう、
この現状を「交差抗原性」があると言います。
【臨床的にみた交差反応性】
・ピーナッツアレルギーの場合、えんどう豆・レンズ豆に反応する危険率は5%
・鮭アレルギーの場合、カジキ・ひらめに反応する危険率は50%
・牛乳アレルギーの場合、牛肉に反応する危険率は10%
山羊乳に反応する危険率は92%
・花粉アレルギー(ブタクサ等)の場合、りんご・桃・メロンに反応する危険率は55%
・ゴム手袋などのラテックス素材アレルギーの場合
キウイフルーツ・バナナ・アボカドに反応する危険率35%
※独立行政法人 環境再生保全機構「よくわかる食物アレルギー対応ガイドブック」より
食物アレルギーは命に関わる大切なことですが
慎重になりすぎて、食べられる食品がほとんどない。ということにならないよう
正しい診断に基づき、必要最小限の除去を行うことが基本です。
患者さんのQOLが下がらないよう、安全性を確保しながら「食べること」を
目指した食事指導が管理栄養士・栄養士に求められていることです。