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鉄分補給には鉄製調理器具がよい?

2016年02月11日

日本標準食品成分表の改定で、ひじきの鉄分が激減!!
というニュースが流れてしばらくたちますが、
食品中の成分を変化させる要因は様々で「調理器具」による影響も
知られています。

特に鉄分は鉄製の調理器具を使用することで、器具から鉄分が溶出し
鉄分量が増えると考えられています。

鉄分補給のために鉄びんで沸かしたお湯を使っている方も
いらっしゃいますが、
一体どのくらいの鉄分が溶出しているのか?
鉄びんで沸かした場合と、最近主流のステンレスやかんに鉄たまごを
入れて沸かしたお湯で変化率を比較した実験結果を紹介します。

沸かしたお湯の鉄分対決

代表的な鉄製調理器具「南部鉄びん」と
鉄びんよりも手軽に利用できる「鉄たまご」でお湯を沸かし、
溶出した鉄量を検証した実験結果です。

(1) 鉄びんで沸かした湯 
(2) ステンレス製やかんに鉄たまごを入れて沸かした湯

結果

それぞれ水道水1ℓを沸かした結果、お湯に溶出した鉄量は以下の通りです。
(1) 鉄びん … 0mg
(2) 鉄たまご… 0.045mg
※この実験結果は2015年9月号の「栄養と料理」の中の特集ページより抜粋

この時の実験では、鉄びんで沸かした湯中に鉄分の溶出が見られませんでしたが
日本調理科学会誌に掲載されていた他の研究結果では
鉄びんで純粋1ℓを30分加熱し、沸騰直後、5分後、10分後、30分後に鉄量を
計測し、各時間での鉄の溶出量を測ったところ
各時間で0.2mgの鉄分が検出された、との報告もあります。

条件や加熱時間、沸かす湯量によっても結果が変わることが考えられるため
今回の結果だけを見て鉄びんは鉄分補給に意味がなかった、という
ことではありませんでのあしからず。

手軽に使える鉄たまご

今回の実験でも使われていた「鉄たまご」はインターネットでも1,000~2,000円
と安価で手に入ります。
私の曾祖母もお湯を沸かす時に鉄たまご(当時は何か知りませんでしたが)を
鍋にいつも入れていたことを思い出しました。
最初はたまごくらいの大きさだったのが、
時間が経つにつれてどんどん小さくなっていたので、
まさしく鉄が溶出していた証拠ではないでしょうか。

鉄分は日本人が不足しがちな栄養素のひとつです。
吸収質も悪く鉄分不足で悩んでいる方も多いですが、調理器具で鉄分を多少なりとも
補給できれば嬉しいですよね。
鉄たまごから溶出する鉄は、二価鉄の割合が多く吸収されやすい鉄分が効率よく
とれることもわかっています。
ただ酸化して吸収の悪い三価鉄にも変化しやすい特徴を持つため
鉄たまごを沸かした湯は、速やかに使い酸化しない工夫も必要でしょう。

食べ物からのアプローチだけではなく
調理器具や調理工程から食事や栄養素のアプローチができれば
アドバイスの幅も広がりますね。