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漁師さんたちが作った美味さぎっしりの一杯「番屋汁」 ─新潟・寺泊─
2016年11月01日
米、酒と言えば新潟を思い浮かべてくださる方も多いと思いますが、新潟はそれだけではありません。
春夏秋冬一年を通して海の幸、山の幸が溢れている新潟
手がとまらなくなってしまう茶豆、白くきめ細かい里芋、雪下にんじんやおけさ柿などの野菜や果物たち。村上の塩引き鮭に佐渡ブリ、あまーい南蛮エビやカニをはじめとする豊富な魚貝類。思い浮かべるだけで食欲がかき立てられるようなそのままで美味しい食材が他にも数え切れないほど。縦に細長く海と山に囲まれた新潟には春夏秋冬一年を通して海の幸、山の幸が溢れています。
そんな新潟の縦の真ん中くらい、海岸沿いに位置する小さな漁師町の寺泊。晴れた日には佐渡が美しく一望でき、沈む夕日も見事です。本州の中では佐渡と最短距離にあって寺泊~赤泊で両泊航路が結んでいます。
日本海の鎌倉とも呼ばれるほどに寺院が多くかつては北陸街道の宿場町として知られていました。現在は魚の市場通りが有名で夏や正月前には県内はもちろん、県外や関東からは買い物ツアーバスも来るほどに賑わっています。
漁師町ならではの番屋汁
寺泊には漁師町ならではの番屋汁という汁があります。
番屋は浜小屋のことで、昔、共同で漁をしていた頃に船の番屋で漁師の人たちが獲れた魚で作ったことから番屋汁と名付けられました。現在ではそのようなことはなされていませんが、家庭でその時季折々の新鮮な魚を使って作られ親しまれています。
シーサイドマラソン大会など町のイベントで大きな鍋で大量に作られふるまわれることもあり、浜風を受け肌寒さを感じるときなどは特に体中にしみわたり美味しさを満喫できます。イベントでの大鍋番屋汁を求めて訪れてみるのもよいかもしれません。
元々は魚だけで作られていたようですが、今は大根やネギなど様々な野菜やカニなども入れられます。また、新潟県内でも地域や町によって納屋汁、釜汁、おき汁など呼び方や材料も変わり、寺泊の番屋汁には酒粕を入れることもあります。酒粕は臭み消しにもなりますが、たんぱく質やビタミン類など栄養価も高く便秘改善、ガン予防、糖尿病予防、美肌効果など様々な効能を期待できる物質が含まれています。
美味しさだけではない栄養満点の優秀な一杯
新鮮な魚を使いますので今注目されているオメガ3であるDHA、EPAが豊富です。脳の活性化、血液サラサラ、炎症を抑える等々効果は多数です。鮭を使うことも多いですが鮭にはアスタキサンチンが豊富で老化の原因となる活性酸素を除去する抗酸化作用があります。また魚のたんぱく質は構成しているアミノ酸の種類が豊富で質から言うと牛肉や豚肉などより優れています。
味噌は大豆が原料ですが発酵によってさらに栄養価は優れたものになっており、消化吸収されやすくなったたんぱく質のほかビタミン・ミネラル類なども含みます。中でもマグネシウムは体の中で起こるとても多くの代謝や働きに関わっており、重要な栄養素です。野菜もたくさん入れて、うま味ぎっしり、そして美味しさだけではなく栄養も詰まった優秀な一杯です。
番屋汁の作り方
<材料(4人前)>
・ブリ、鮭 200g
・白菜 3~4枚
・大根 5cm
・人参 3cm
・小松菜 2茎
・長ネギ 1/2本
・味噌 大さじ3
・酒粕 大さじ1~2(お好みで)
※魚、野菜はその時季のものを使うのでこの材料は一例です
<作り方>
1.魚は丸ものならエラ、ウロコ、内臓を取り骨ごと切る。
2.白菜は一口大、大根・人参はいちょう切り、小松菜は3cm程度、長ネギは小口切りに切っておく。
3.鍋に水800mlと大根、人参を入れ火にかけ、やわらかくなるまで煮る。
4.やわらかくなったら魚を加えて一煮立ちさせる。
5.白菜も加えて火を通す。
6.ボールで酒粕を鍋からとった少量の汁で溶かし鍋に戻す。
7.小松菜を加えてさらにひ一煮立ちしたら味をみながら味噌を溶き入れる。
8.大きめな器に盛り、長ネギをちらしてできあがり。